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 Movie Review 2002・12月9日(MON.)

セレンディピティ

 クリスマス直前ニューヨーク。ブルーミングデール百貨店で、恋人へのプレゼントを探すジョナサン(ジョン・キューザック)、在庫 1 組限りの手袋に手を伸ばしたところ、サラ(ケイト・ベッキンセール)もまたそれをつかんで引っ張り合いとなる。一組の手袋を巡って血で血を洗う戦いが始まる! ババーン! …というのはウソで、これがキッカケでジョナサンとサラは惹かれあい、しかしお互い彼女・彼氏がいるので、「もし、これが運命の出会いで、二人が“ソウルメイト”なら、きっとまた会えるはず!」と、お茶してスケートして別れるのであった。果たして二人は再び巡り会えるのでしょうか? ババーン! …いやー、ロマンチックですねー。

 数年後彼らは、それぞれ別の婚約者がいるというのにだ、お互いを捜してニューヨークを彷徨うことになる。「おいこら、キミらロマンチックもほどほどにしなさい」と私はひとりごちたのです。この、圧倒的なまでの「どうでもいい」感はどうしたことか。

 恋愛映画というものは、二人の恋路を妨げる障害が、巨大かつリアルなものであればあるほど盛り上がるものです。しかしながら、この映画における障害とは、「本人たちのお脳が弱かったばっかりに、キチンと連絡先を聞かなかった」というもの。うーむ。こんな話で一本映画を作ってしまうとは…。この作品こそ、映画 100 年の歴史が到達した、最高にロマンチックな恋愛映画である、と断言したい。ちなみに、“ロマンチック”とは、「いつも夢を見ていて現実を見ようとしない大馬鹿」というような意味です。

 監督は、なかなかの掘り出し物『ヒア・マイ・ソング』『マイ・フレンド・メモリー』のピーター・チェルソムというのにだ、今回はロマンチック過ぎました。しかし、この映画が 9 ・11 同時多発テロを挟んで製作されたことを鑑みれば、ニューヨーカーも現実を直視してばかりではおられず、“ソウルメイト”“運命”“サイン”という世迷い言にウツツを抜かす気持ちもわからないではない。二人は「5 ドル紙幣」と「ガルシア・マルケスの本」にお互いの連絡先を記入し、それらを市場経済に放り投げる。運が良ければそれぞれの手元に届き、再会を果たせる、というわけで、そこには「市場経済よ、永遠に機能せよ」との願望がこめられているのであった。

 そんなことはどうでもよく、ユージン・レヴィ扮するブルーミングデールの店員さんが笑えるし、ケイト・ベッキンセールも『パール・ハーバー』とは別人のごとく可愛いのでオススメでーす。

(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Dec-09;

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