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 Movie Review 2002・12月5日(THU.)

この素晴らしき世界

 第二次世界大戦下、ナチスドイツ占領下チェコの小さな町。ヨゼフとマリエ夫婦は、収容所から逃げてきたユダヤ人青年ダヴィドをかくまうことになってしまいます。ヨゼフ宅には、マリエに想いを寄せるナチ協力者、ホルストが足繁く通ってきてハラハラドキドキ。果たしてヨゼフとマリエはユダヤ青年をかくまい通せるのでしょうか? ババーン!

 アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされたチェコ映画ですが、『シンドラーのリスト』(99 年アカデミー賞 7 部門受賞)、『ライフ・イズ・ビューティフル』(99 年アカデミー賞 3 部門受賞)という具合に、ユダヤ人迫害を描いた映画は米アカデミー賞で厚遇されており、そこからハリウッドがいかにユダヤ資本に支配されているかを読みとることもできましょう。

 そんなことはどうでもよく、ハラハラドキドキシーンになると、画調が変わってしまうのはどうか? と思いました。サスペンスフルなシーンになると、動きに残像が目立つ「コマ伸ばし」技法が使われます。「はいはい、ここからハラハラドキドキしてくださいねー」という親切心なんでしょうかね? しかしハラハラドキドキするためには、映画に感情移入しなければならないのに、画面の調子が変わってしまうと観客は「あ、今、自分は映画を見ているのでした」と、ふいっと現実に引き戻されてしまうのでは? どういうつもりでしょうか。

 夫婦の名前がヨゼフとマリエという具合に、聖書の物語を重ね合わせる小細工が施されていたり、コメディタッチだったりするのは、監督ヤン・フジェベイク 1967 年生まれ、原作・脚本ペトル・ヤルホフスキー 66 年生まれという、若い世代だからでしょうけど、「ユダヤ人迫害」の重い歴史もおもしろおかしく消費されていくのだなあ、と思いました。

 こじんまりと、なかなかの力作、ゆるいところもありますけどラストはちょっぴり泣いちゃった。エヘ。京都朝日シネマでの上映は終わりましたが、また何かの機会に。オススメでーす。

☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Dec-05;

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