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Movie Review 9月6日(THU.)

ドリフト

 監督ツイ・ハークは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズ、製作者として『男たちの挽歌』シリーズなど、アクション映画のエポックを何度も作り、最早伝説と言っていい存在です。しかしジャン=クロード・バン・ダム主演作に招かれハリウッドに進出するも、パっとせず、そんなツイが香港へ堂々の帰還、満を持して放つ傑作アクション大作です。ばばーん。

 宣伝コピーは「これが、ジョン・ウーへの挑戦状だ! ハリウッドを超えた――ハイパー・バイオレンス・アクション」ということで、ジョン・ウー的アイテム「鳩」とか、「拳銃を突きつけあっての睨み合い」とか、かたやハリウッドの成功者ジョン・ウーを意識しているのですが、ジョン・ウー・スタイルはそもそもツイ・ハーク製作の下に形成されたワケですし、香港アクションがとっくにハリウッドを超えているのは世界の常識、いまさら「ハリウッドを超えた」などと言うてしまうのも呆れ返る他ないのですが、バチグンにチャレンジングな作品であることは確かです。

 まずもってかつてなく目まぐるしいカット、カメラの動きにアッと驚きこれはひょっとしてウォン・カーウァイ? または三池崇史『DEAD OR ARRIVE』か? 主人公(傑作『ジェネックス・コップ』でも好演のニコラス・ツェー)が如何にヤバイ警備会社で働くにいたったか…を説明するくだりのテンポの速さはどうか? 突如舞台は南米に移ってもう一人の主人公:傭兵ジャック(ウー・バイ:香港のロケンローラーだそうです)の猛烈ガン・アクションが展開するシーンの唐突な転換はどうか? 私、ちょこまかカットを割る演出は苦手なのですが、最近の流行りっぽい演出をマネしても流石にツイ・ハーク、もうグイグイ話に引き込んでいくドリフト感が素晴らしいのですね。

 とにかく怒濤のごときアクションの連続。ところどころに『ファイト・クラブ』風の CG が使われるのも最近の潮流、しかし CG が如何にショボくとも、もう、何というか、バチグンなのです。

 ツイ・ハークにしてみれば、「今、もてはやされているジョン・ウーも、ユエン・ウーピン(『マトリックス』の武術指導の人)も、元はと言えばオレ様あってのモノなのですよ、キミら(誰)チョコマカしょぼいアクションを撮っておられますがね、色々若者が喜びそうな小細工を労してもオレ様ならもっと凄いアクションが撮れるのだよね。才能があるって罪だよね」との、世界のアクション映画監督全てに対する挑戦であり、自らのスタイルをどこまで壊せるか? という自分自身に対する挑戦なのですね。

 伝説的なキャリアを誇りながら、前へ前へ進もうとするツイ・ハークの強靱な意志に呆然と感動しつつ、香港、九龍城の雑居アパートで、九龍駅で、そして九龍スタジアムでと、場を変えて次々繰り広げられる超絶アクションに「おおおおお! 凄い!」と私はアドレナリンを噴出させ続けたのでした。

 みなみ会館での上映は終了、ヴィデオででも見てくださいな。

BABA Original: 2001-Sep-06;

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