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Movie Review 3月20日(TUE.)

三文役者

 齢 80 を越える新藤兼人監督、老いてますます盛ん、前作『生きたい』は、日本一のブチ切れ女優大竹しのぶの怪演もあって、頭がグネグネの、なんともモノ凄い作品だったのですが、今回もブチ切れぶりでは引けを取らない荻野目慶子を迎え、老人監督特有の「細かいことはどうでもいい!」と吹っ切れた演出は、「やっぱり、たまらーん」と頭を抱えながらも、猛烈な感動を覚える傑作となっています。

 バイプレーヤー殿山泰司(最近では『愛のコリーダ 2000』でもいい味を出しててましたね)の半生を描きます。物語は、タイちゃんこと殿山泰司が、京都西木屋町通り四条下ルの喫茶店「ソワレ」の女給さんキミエに猛アタックするところから始まります。タイちゃんは、キミエを待ち伏せ、四条大橋をそぞろ歩くのですが、すれ違うのはなんと舞妓さんにお坊さん! このワンカットで「そうか、ここは京都なんだ!」と観客は納得せざるを得ず、さすがベテラン監督! …と思わず唸りました。

 そんなことはどうでもよくて、なんといっても竹中直人のソックリぶりが素晴らしいのです。竹中直人は、普通ちょっとマネしないような、知ってる人にはメチャクチャおかしいモノマネを得意とされています。竹中直人監督主演作品にアラーキー原作の『東京日和』があり、なんで竹中直人はアラーキーのモノマネで演じないのかなあ、と内心ガッカリしたものですが、今回は、全編にわたって竹中直人による殿山泰司のモノマネがたっぷり楽しめる、竹中モノマネファンには堪えられない作品です。これだけでも見る価値あり! です。

 近代映協『裸の島』『人間』などの殿山泰司出演場面が挿入されるのですが、こちらはホンモノの殿山泰司ですので、殿山泰司をよく知らない若い観客でも、竹中直人のモノマネぶりを楽しめるようになっています。普通、挿入場面は撮り直したりするところですが、ホンモノとモノマネが一本の映画に同居しております。新藤兼人監督のクリエイティブ・パワーをヒシヒシと感じるところです。約 30 年間の物語なのですが、竹中直人も荻野目慶子も、老けメーキャップを施されるわけでなく、そのまんまだったりするのも、なんかスゴイです。

 とにかく、殿山泰司最高! そして竹中直人最高! と、役者さんの演技を思いっきり堪能できる作品です。オススメ。

BABA Original: 2001-Mar-20;

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