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Movie Review 2000・11月17日(THU.)

十五才 学校IV

 山田洋次監督作品。15 歳の不登校の少年が主人公。家出してヒッチハイク、 7 千年の歳月を生きてきた縄文杉に会いに行く道中、さまざまな人々とのふれあいを通じて成長する…ってか? あはははははは、こりゃ愉快、愉快。主題歌は「ゆず」、ポスターには「326 (ナカムラミツル)」の絵が使われていて、なんとも激痛必至の映画ではないかいな。しかしおのおのがた、映画が痛いか痒いか酸っぱいかは見てみるまではわかりませぬぞ。で、この映画、傑作。

 山田洋次といえば、近年は松竹を存続させるためだけでは? といった映画作りで『虹をつかむ男』とか、たまらん感じ。松竹大船調というか、エロ・グロ・ナンセンスとは無縁、セックス、ドラッグ & ロケンロールなんて存在しないよ的/文部省推薦的な作風で、気分もスッカリ萎えがち。『学校』シリーズも、まあおもろいんだけど、初期『男はつらいよ』に見え隠れしたアナーキーさ、ドロドロっとしたところが欲しいところだ。

 この映画も、主人公の少年が旅先で出会うおじさん、おばさん、お姉さん、おじいさんなどなどを見れば、やっぱり田舎の人は善人ぞろいなんやなぁ? と観客は勘違いするだろうし、少年がトントン拍子に人生の真実を学びながら、たいした苦労もせずに九州・屋久島にたどりつくのもなんだかなー、ではあるが、旅先で出会うおじさん、おばさん、お姉さん、おじいさんが、とにかく良い。

 赤井英和演じる、昔はわいも悪かったんや、兄ちゃん 15 歳か、ええな、って感じのトラックの運ちゃん、主人公と同じく不登校の息子をかかえる麻実れい(よく知りませんが元タカラジェンヌらしい)。そして極めつけは丹波哲郎演じる、シベリア帰り・屋久島在住「バイカルの鉄」。とにかく丹波哲郎が最高! やっぱり丹波哲郎はスゴかった! ホント。

 おじさん、おばさん、お姉さん、おじいさんもいいが、主人公を演じる金井勇太くんも、セリフ回しが山田洋次の分身的俳優=吉岡秀隆ソックリだけど、なかなか頑張ってるぞ。冒頭では、コイツいっぺん殺したろかと思わせる馬鹿たれぶりだが、旅を通して世界にはさまざまな人間がいるという当たり前の真実を見いだし、他人の気持ちが汲める人間へと成長する。少年が「バイカルの鉄」の胸中をおもんばかって一生懸命語るシーンは泣ける!

 少年は、学校・家庭に順応して生きていく決意を固める。ラストは、果たしてそれで良かったのかどうか? と少し匂わせる。もっと、暗さ、どうしようもなさ感が欲しいところであるが、まあいいでしょ。思ったよりもお説教くさくないし、戦後民主主義教育っぽくもないのでオススメだ。しつこいようだが丹波哲郎最高! どうスゴいかは自分の眼で確かめてくれぃ。

BABA Original: 2000-Nov-17;

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