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Movie Review 2000・5月26日(FRI.)

オール・アバウト・マイ・マザー

 ペドロ・アルモドバルが還ってきた。しかも『神経衰弱ぎりぎりの女たち』以上の傑作を引き連れて。

 かくゆう僕は、『キカ』や『ハイヒール』以降の彼の作品には、興味を失ってしまい見てないのである。しかし確信をもって言ってしまおう。『オール・アバウト・マイ・マザー』は彼の最高傑作であると。アカデミー外国語映画賞は伊達ではなかった。

 物語は、三世代にわたるエステバンという男をかぎに、不思議な連結を見せる血のつながりのないファミリーとでも言うべき女たち(おかまちゃんも含めて)を中心に語られていく。そしてほとんど男は登場しない。その登場人物である女たちの相関図をここで語るのはあえてさけます。多くの文字量を必要とするし、それは見てのお楽しみというものでしょう。

 一見自立して、しっかりと足に地を付けているように見えるこの女たちは、実のところ皆、様々なものに依存しつつ今にも崩れてしまいそうな脆さをも見せつける。息子の存在であったり、同性のパートナーであったり、仕事であったり、ドラッグであったり、そして微妙に皆が肩を寄り添わせて生きている様子が、実にわかりやすく琴線に触れるのです。

 自分の頼っているものがいかに脆くて儚いものであるかと言うことを思い知らされたとき、人は皆誰かに助けを求めます。しかし助けを求められた方もそれにいつも応えることが出来るとは限らないし、むしろ意に添わないことの方が多かったりするんですよね。そんなとき、僕らは、そっとお互いに肩を寄せ合うのです。それは依存ではなく、まさにフィフティ・フィフティでどちらかに傾いても崩れていってしまうような、なれ合いではない信頼感、と言った感じでしょうか。

 少々、時間が性急に経過しすぎていくようなところはありますが、いいんです、時間は性急に過ぎていくものです。でも成長はいつまでもだらだらと、なかなか時間に追いつかないんですけど。

 とりとめのない感想のようなことばかり書いてしまいましたが、何よりもの驚きは、アルモドバルが、こんな泣ける映画を撮ってしまったと言うことです。多少、落ち着いてはいるものの、いつものクィアな雰囲気はしっかりとあるし、ブラックなユーモアや、そこはかとない下品さも健在です。世評的には、女性が全女性に対して推薦する、見てもらいたい映画、と言うことになってますが、これを撮ったのは紛れもなくペドロ・アロモドバルなのです。

 僕は是非とも世の男どもに見て欲しい。いや、でももしかしたら男とか、女とか、おかまちゃんとかそう言うのが関係ないところでの個人としての物語に感動したのかな。僕は泣けました。

 5 月 27 日より京都みなみ会館にてロードショーです。

kawakita Original: 2000-May-26;

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