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Movie Review 2000・5月10日(WED.)

アナザヘブン

 飯田穣治監督作といえば、『ナイトヘッド』は、普通って感じ、『らせん』は原作が全然アカンからだと思うが、てんでダメ、テレヴィは見たことなし。

 なんでも同じ設定で、テレヴィでも少しずつ登場人物が重なりながら違う物語が進行するという、メディアミックスな戦略を採っているらしい。てなこと言うと最高につまらないみたいでワクワクなんだが、同類に見られるがちな『ケイゾク』などより 1000 万倍は作り手に真剣さが見受けられ、テンで恐くはないものの、おお、これは、と力が入るシーンあり、で拾いモノ。

 少々ネタバラす。グルメな連続殺人事件が起こる。追いかけるは若手=江口洋介、ベテラン=原田芳夫の刑事コンビ。『セヴン』の影響大な筋立てだ。人間から人間へとのり移るワケのわからん『ヒドゥン』風の「何か」が登場し、トンチキ度満点であるが、この「何か」にのり移られた人間の常軌を逸した行動が、なかなか素敵である。ピョーンと『マトリックス』風にビルの谷間を飛び越えたり、自分の骨が折れるほど蹴りを入れたりと、『寄生獣』風で、嬉しさ満点。

 また、果たしてこの人は「何か」に乗り移られているかもよ? と疑心暗鬼が江口洋介にムクムクと湧き起こり、惚(ホ)の字の美人女医、松雪泰子とどうこうするところは、なかなか感動的。

 しかし、過激さが売りのようだが、後半の展開はヌルヌルだ。この「何か」というのは「悪意」の象徴らしく、『アナザヘブン』という題名は、「この世は犯罪に満ちていて、地獄みたいだなんてとんでもない話、人間の悪意が大好きな人間にとっては、天国みたいなものだぜ」、という主張による。なんか、仮にも「悪意」の象徴たる存在が、そんなわざわざ言わんでもみんな知っていることをトクトクと語ってしまうのは、とんがった振りをしてても、まだまだ青いなあ、心暖まってしまうなあ、と思わんでもない。

 さらに、善意を体現する人物も登場し、アメリカ映画にありがちなキリスト教バンザイ的ドラマツルギーと大差はなくなり、なんで 15 歳未満入場禁止にするのかなあ、むしろ文部省選定、ご家族そろっての鑑賞に向いた映画だ、と思うぞ。

 とはいえ、ノンストップで事件を追いかける江口洋介+原田芳夫、加えて老け役の柄本明のバランスがよく、モデル出身の市川美和子ちゃんは、ホンマにその辺にナンボでもいそうな存在感で好演。「これは痛い!」と耐えられない人もいると思うけど。「身近な“カリスマ”」として注目を集めているらしいので要チェックか? 知らん。

 ちょっとテレヴィの方も見てみようかしら? おお、テレヴィ版の方は、もうレンタルヴィデオが出ているらしいぞ、と思うツボにはまりそうな今日この頃である。

BABA Original: 2000-May-10;

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