京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

Home > Reviews > 00 > 0310
Movie Review 2000・3月10日(FRI.)

ダブル・ジョパディ

 …とはよくわからない邦題でげすな。英語題をそのままカタカナにして邦題にしちゃうってのは、アメリカなどで話題になり、日本に情報がドンドン入ってきちゃって結局そのまま邦題にする…って場合と、配給会社が全然やる気がなくて邦題考えるのも面倒くさい…って場合があると思うのだけど、この映画は後者であろう。

 かと言って、この映画がつまんないとかでは決してなく、それどころかボクなどは「こういう映画を見たいから、映画館に通うのだなあ」と幸福感に包まれてしまう傑作なのだけど、悲しいかな「売り」がない。アシュレイ・ジャッドなんて知らない人がほとんどだろう。題材もキャッチーなものはなし。「ダブル・ジョパディ」なんちゅうワケのわからん邦題ではホントに誰も見に行かないと思う。『逃亡者』的な話であり、トミー・リー・オヤジも出ているからソレ風の邦題を付けたらどうだろう。インターネットがうまいこと使われているので、『検索者』というのはどうだ? ダメか。

 で、「ダブル・ジョパディ」とは? 「誰もが同一の犯罪で二度有罪にならない」という合衆国憲法の規定を指す。ちょっと思い出しただけでもいくつかの映画のネタになっていた規定だ。宣伝コピーは「知っていますか 罪にならない殺人があることを…」で、おいおいまたネタバレやんけ! とブチ切れかけたが今作では、オチのネタではなくこの規定から物語が始まる、というヒネリが効いているのでご安心を。

 いわゆる「法廷もの」でなく、『逃亡者』と似た構造を持つアメリカを縦断する逃亡+追跡劇であった。主人公が追いつめられる→トンチを効かせて窮地を脱するというパターン、また小道具の使い方などヒッチコックをホウフツとさせ、「きっちり、頭を使って作られている」という印象である。脚本は『ザ・ロック』のデビッド・ワイズバーグとダグラス・S ・クックという人。『ザ・ロック』は MTV 風の大げさな演出でワケわからんとこもあったが話はおもしろかったかな。今回は、脚本が同じ人でも監督が違えばエライ違いという見本。

 で、その監督は『ドライヴィング・ミス・デイジー』のブルース・ベレスフォードで、「人間ドラマ」を得意とする監督なのだろう。今作はジャンルとしてはサスペンス・アクションだが、キャラクターが立っているのでドンパチ派手なものではないけれども、手に汗握らせるものになっている。悪モンとか、刑務所の女囚とか、「いかにも」って感じで見ていて安心できますな。

 トミー・リー・ジョーンズがメチャクチャオヤジな保護観察官役で登場。コーヒーにコッソリウィスキーを注ぐ、というところとか情けなーい感じで素晴らしい。アシュレイ・ジャッドも、一瞬ドレスアップするシーンは「おおっ!」って感じで最高。

 撮影は、夜のシーンとかメチャ明るくて不自然なんだけどこういう映画は明解な画面づくりが必要なのだ。ともかく、これはオススメ、というか、コレ観て胸の昂まりを感じないヤツとは今後一切映画の話なんてしたくないっ!…なんちゃって。

BABA Original: 2000-Mar-10;

レビュー目次

Amazon.co.jp アソシエイト