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Movie Review 2000・6月7日(WED.)

エニイ・ギブン・サンデー

 オリヴァー・ストーンってば、『サルバドル』『プラトーン』『JFK』など、かつては一本スジが通った「社会派」監督。プロデュース業にも進出しちゃったりして金持ちになったからか(よく知らないけど)、最近は当たり障りのない題材で、大スターを『新春スター隠し芸大会』風に散りばめ、MTV 的な演出でグイグイ押しまくる、最も資本主義的な監督に成り果てている。前作『 U ターン』はフィルム・ノアールっぽくてチョイとおもしろかったが。

 今回も、撮影・編集に MTV 出身のスタッフを起用、試合シーンになるとロックンロールが流れ、MTV 風の映像があふれかえる。2 時間 30 分近くの長尺でありながら、さほど「退屈」しないのはひとえに、MTV 風映像によって観客の思考が停止しているからであって、しかし、ハタと我に返れば、退屈しきっている自分がいる、という映画である。

 アル・パチーノ演じるコーチを中心に、マイアミ・シャークスなるアメフトチームをめぐるアレヤコレヤ。一応、O ・ストーンらしく商業主義によって、アメフトというスポーツがいかに歪められているか? 一夜にしてスーパースターを生み出すマスコミの威力、などがチョロチョロ描かれる。しかし、チョロチョロっとドラマを描いて観客が頭を働かせ出すと、途端に MTV 風試合風景に場面が移る。せっかくおもしろくなりそうだったのにぃ、と、カックンだ。

 グウェネス・パルトロウ演じるチームオーナーの「成長」ぶりの甘っちょろさも、許しがたい。視聴率を稼いで試合の放映権の値段をつりあげるためには、選手が怪我をしてようがお構いなしの、「さすがブルジョア!」って感じだったのが、クライマックスの試合で感動してしまったのか、妙に温情的なオーナーに変節してしまう。ファンタジーか、これは?

 実のところ、ボクはスポーツ映画は大好きなので(スポーツは嫌い)、せめて試合シーンだけでもおもしろければ良いのだが、何せ、MTV 風、何がなにがなにやら、勝っているのか負けているのかようわからん。つまらん。手に汗握らん。『ベン・ハー』の戦車レースでも見て、勉強してほしいぞ。

「次の作戦は?」と聞かれて、パチーノが、「コマンチだ!」と答えると、まわりは「おお!」と驚き、「さすが!」「ここでコマンチをやるとは!」「きゃあ、コマンチよ!」「イエイ、コマンチ!」と大騒ぎなのだが、コマンチって何やねん! 事前に「コマンチ」なる戦法について、伏線を張っておくべきでは? 知らないのはボクだけ?

 ということで、チャールトン・ヘストンもちょっと出ているので、ポケーッと暇つぶしをしたい人にはオススメ。『ザ・エージェント』をヴィデオで見直した方が 100 万倍有意義ではある。

BABA Original: 2000-Jun-07;

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