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Movie Review 2000・7月30日(SUN.)

スチュアート・リトル

 リトル家にやってきた養子は、なんとネズミだった! ちゅー。

 家畜どもが人間様の言葉をしゃべる『ベイブ』の流れを汲む、CG 、オーディオ・アニマトロニクス(すなわち、ロボット)技術を駆使してのメルヒェン巨編で、今回は、CG ネズミが大活躍…、ということだけど屈折した奇妙な映画になっている。

 多くの観客にとって謎なのは、ネズミを養子にすることに登場人物たちがあまり驚かないことだろう。世の中には、「帽子を妻と間違えた男」もいるそうだから、そんなに驚くべき事ではないかもしれないけれど、リアクション軽すぎ! というか、ネズミが服を着ていて人間の言葉をしゃべることには誰も驚かないし。そう、この映画のネズミは、寓意としてのネズミなのだ。ネズミの姿形をしているが、違うモノを表現している、という。

 模型ヨットレースのシーンがある。ネズミのスチュアートが操縦する船の名前を見た瞬間、ネズミが何を象徴しているかに思い当たるはずだ。ヨットには「WASP」と書かれている。ホワイト・アングロ・サクソン・プロテスタント。アメリカのマジョリティだ。ネズミは、WASP 様のヨットを操縦させていただく非 WASP 人種の隠喩だったのである。

 つまりこの映画は、中流 WASP 家庭が、非 WASP 人種を養子にすることによって起こる軋轢を描いている。ネズミのスチュアートは、養父・養母がリベラルだったりするから、WASP 家庭に受け入れられていく。しかし、ペットの猫に陥れられ、さながら『オリヴァー・ツイスト』風のディケンズ的苦難をくぐる。猫もまた、非 WASP 人種の象徴で、おそらくはアフリカ系か、イタリア系なのだろう。マジョリティに受け入れられていくマイノリティは、他のマイノリティの嫉妬を買い、足を引っ張られる運命にあるのだ。

 WASP が、マイノリティを迫害しているかもしれないけれど、WASP には、マイノリティを受け入れる用意がある、むしろマイノリティ同士の対立が問題なのだ、と、この映画は暗に示している。ホンマか。知らん。ちゅー。

 この、隠されたメッセージは、『シックス・センス』の M ・ナイト・シャラマンが脚本を担当したことによってもたらされたのだろうか。彼は、インド系であり、『シックス・センス』もまた、人種を越えるコミュニケーションの困難さを、死者と生者の対話という寓意で描いた映画であった、と見ることができる。『シックス・センス』との共通性は、「洗剤を飲む」ということだけではないのだ。

 ほんわか楽しい映画を期待していくと、ガッカリするだろうが、そんなもん期待しない人にはオススメ。

BABA Original: 2000-Jul-30;

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