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Movie Review 2000・12月15日(FRI.)

いつまでも二人で

 多作な監督マイケル・ウィンターボトムの最新作は「ロマンチック・コメディ」に挑戦だい!

 ロージーとヴィンセントは結婚 5 年目。何かが足りない、それは子どもだ!…と、せっせと子づくりに励むがうまいこといかず、倦怠感が漂う。そこへロージーのかつての文通友だち、フレンチ人のブノアがひょっこり訪問。さてさて如何なることになりますやら…とたわいのないお話だが、さすがはウィンターボトム、労働者階級の生活感がにじみ出る。フレンチ人ブノアも、役柄的にはクラシック音楽を愛する小粋なフレンチだが、見た目はちょっと下腹も出てきて無精ヒゲもむさ苦しい失業者だったりする。

 ロージーは文化会館の受付嬢で、日々、上司にブツブツ言われてムカつく日常、セクハラもあり。旦那は、警官をやめて女房の父親のガラス工場で働いているが、もし警察を辞めてなければ今頃刑事に昇進しているはず、と内心忸怩たるモノがあって…と、いつまでもこんな生活を続けてていいものか? という閉塞感から子作りに逃避、それもうまくいかないってんで浮気へと突き進んでいく。

 いつものウィンターボトムなら、たとえばブチ切れた旦那が、女房に色目をつかうフレンチ人をブチ殺す展開になりそうなのだが、「今回はコメディを撮る!」との決意も固く、ユーモラスに展開。テンポも良いし、ウィンターボトム印のコメディ、おかしいけれどもリアリティがあって、たいそう良い感じ。

 思い起こせばウィンターボトム、これまでも見かけのスタイルは次々と変えてきているのだ。一般的に監督は、気に入った撮影監督とズッと組む場合が多い。しかしウィンターボトムはこれまでの作品すべてで違う撮影監督と組んでいる。一作ごとに違う主題があり、主題が違えば作品のルック & フィールを変えるべきだと考えているフシがある。たとえば『アイ ウォント ユー』は、『デカローグ』などのキェシェロフスキ風に行ったれ! と、キェシェロフスキ御用達の撮影監督スラヴォミール・イジャックと組んで見事にキェシェロフスキ風味が横溢する映画を作ったりと、自前のルック & フィールを固めないようにしているのでは。今回はセドリック・クラピッシュ監督とコンビを組むことが多いブノワ・デロムが撮影を担当。これまでにない軽快さがある。

 舞台が北アイルランドのベルファストなのもおもしろい。セリフやニュースで IRA 、シン・フェン党という単語が出てくるが、特にベルファストでなくても成立する話。ガラス工場のオヤジが言う。「ベルファストにも、IRA じゃない人間がいるんだ。そしてそういう人間がこの国を支えているんだ」。ごもっともではあるが、この辺が、貧乏人の生活をリアルに描けば必ず政治と対立する部分が顕わになるのだ、と常に政治を意識するケン・ローチと大きく違うところだろう。だから、どうだというわけではないが。

 にしても『ひかりのまち』といい、コレといい、「出産」がポイントで随分盛り上がるのだが、ウィンターボトムにも子どもが出来たりしたんだろうか? 「ロマンチック・コメディ」という割にはロマンチックでもないので、ロマンチックが苦手な方にもオススメだ。

BABA Original: 2000-Dec-15;

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