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Movie Review 2000・12月14日(THU.)

ホワット・ライズ・
ビニース

『ロジャー・ラビット』『コンタクト』などのロバート・ゼメキス監督が、ヒッチコック・タッチに挑戦だい!

 ゼメキスといえば、「そこまでやるか?」と思わせる異常さ/逸脱する部分が必ずあって、ボクはコトの他好きなんだけど、今回は CG も駆使してヒッチコック風味の不可能カメラワークに挑戦している。かといって、デ・パルマのように突出して異常なカメラワークが現れるでなく、よく考えればどうやって撮ったかわからない、という感じなのでまあ良いんでないの? しかし、この内容で 2 時間 10 分は長過ぎぞ。ヒッチコックなら 90 分くらいにまとめるのではないか? よくわかりませんが。

 ともかく、クライマックスは無闇に盛り上がるのでオススメだ。近所に座ってた女子も「メチャクチャ恐かった!」と言ってたぞ。ミステリー+サスペンスで、ちょっとした仕掛けもあるから、中身をまったく知らない状態で見に行くのがよろしい。

 以下、ネタバレあり。ご注意。見る前に読んではいけません。

映画秘宝」という雑誌に『裁くのは俺たちだ!』なるファビラス・バーカー・ボーイズの対談があって、この映画の予告編はネタをばらしている、と指摘している。ボクは予告編は目をつぶってて見てないので大丈夫だったが、ポスターのメインコピーにやられた。ネタバレではないか? 日本の宣伝部がまた阿呆なことを…と思ったが、アメリカでのコピーのほぼ直訳、ダメじゃーん!

 湖畔に住む大学教授のハリソン・フォード、その妻のミッシェル・ファイファーが主人公。映画はミッシェル・ファイファーの視点で物語られる。前半は、隣の家の旦那がひょっとして女房を殺しちゃったんじゃないの? というミステリーだ。これは、M・ファイファーの精神状態がおかしいのかも? と思わせて、観客の疑惑が H ・フォードに向かわないようにする大ネタなのだ。宣伝コピーで H・フォードに秘密があると思わせるのは、どうか?

 後半は、M・ファイファーがオカルトにのめり込んで幽霊を見たとか騒ぐ。『ローズマリーの赤ちゃん』よろしく、これは妻の妄想かも? と宙ぶらりん感を出そうとしているんだけど、H・フォードが怪しいと観客が思ってたりすると、この辺の仕掛けがうまく機能しないんですわ。

 よく考えれば、近年アメリカの良心を代表、『エアフォース・ワン』では大統領まで演じた H・フォードというキャスティングも、まさかコイツが? という意外性を狙っているわけで、H・フォードを怪しませるモノは徹底して排除しなければならんのだ。わからんヤツらめ。

 かつてはポスター、チラシ、予告編、TV コマーシャルなど映画にまつわる宣伝物もまた、映画を見る楽しみの一部であったのだろう。しかし、映画をヒットさせるには、他の媒体も使ってイベント化するのが有効である、映画本編のイメージが歪もうがお構いなし、というのが明らかになった今(たとえば『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』)、宣伝物から、映画本編を上手に紹介する機能が失われてきている。昔から、宣伝は常に観客をだまそうとしていたのだが、現在ではより巧妙になっており、大半の観客がだまされていることに気がつかない事態となっているのでは? …とか思いました。と、いうことで、もう映画のポスター、チラシ、予告編、TV コマーシャルは一切見ないと固く誓う今日この頃。広告は私たちに微笑みかける死体。

BABA Original: 2000-Dec-14;

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