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Movie Review 2000・8月4日(FRI.)

アイアン・ジャイアント

 アメリカのアニメといえば、とりあえずディズニー。『ムーラン』『ターザン』などおもろい作品がありつつ、近頃は、ご家族向け、というよりカップルにターゲットを絞っており、ちょっとマーケッティング重視の映画づくりが見え隠れ、ちょっと違うかも、と。

 しかるにこのワーナー制作『アイアン・ジャイアント』は、スピルバーグなら 10000 回は泣きそうな少年向け SF アニメ。ついに、というか、やっとアメリカのアニメもこういう映画が作れるようになったか、と感無量。なんとなれば、ロボットアニメといえば、やっぱり日本。で、この作品も『鉄人 28 号』、『ジャイアント・ロボ』、手塚治虫、宮崎駿の諸作の影響が見え隠れし、よくぞがんばった。

 宇宙から飛来した、オパールのヒロキくん似の巨大ロボットと、父親のいない少年の交流を描く。ロボットの存在を知った政府機関、軍隊が出動、うんぬんというストーリーは『E. T.』に酷似しているが、ちょっとおもしろいのは、時代を 1950 年代に設定している、ということだ。

 大戦終結直後、冷戦が激化する時代。世界最初の人工衛星がソ連によって打ち上げられたスプートニック・ショックの頃。また、『アトミック・カフェ』でも紹介されていた、「ピカっと来たら、サッと伏せる」=“Duck and cover”で核兵器の放射能を防げると信じられていた時代。って、今でもアメリカ人の多くはそう信じているんだろうが。素朴な物語を語るために、まだ SF が素朴だった時代を設定して、親の世代のおっさんどもの「少年の心」をワシづかみにしようという魂胆なのであった。

 素晴らしいのは、メチャお茶目なアイアン・ジャイアントが、攻撃されると防衛プログラムが作動し、禍々しく変態を遂げて悪魔のマシンに変身するってところで、こういうシニカルさは、日本のアニメでは珍しくもないが、未だ勧善懲悪をよしとするアメリカ産アニメの枠を越えるものだろう。

 と、内容的にはやっと、60 〜 70 年代日本製アニメに追いついた感じであるが、技術、仕上げの美しさでは日本製を越える。ジャキーン、ジャキーンとアイアン・ジャイアントが変身するところは、日本のアニメっぽくてカッコいいぞ、っていうか、これだけでオッケー! アイアン・ジャイアントの動画は、3D コンピュータ・グラフィックスを利用しており、これが通常のセル画(?)と違和感なくとけ込んでおり、巨大さ、重さを十二分に感じさせる動きが最高。お茶目だし。

 日本の巨大ロボットアニメといえば、どうしても技術・仕上げ的にモッサさがあるのだが、アメリカ産にて、ついに高い完成度を持つものを見ることができた、という点で強力にオススメ。ちょっとオタクっぽいけど、脚本も練り上げられているので非オタクな方にもお楽しみいただけるかも。って、RCS 京都みなみ会館での上映は終わっちゃいました。見逃した方は残念。

BABA Original: 2000-Aug-04;

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