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Disk Review 2000・4月21日(FRI.)

エクスタシー

ルー・リード

 4 年ぶりのスタジオアルバムと言うことでしたが、間に『パーフェクトナイト』という、アコースティカルなライブアルバム(これが名盤でした)があったこともあり、さほどのブランクは感じられなかったルー・リードのニューアルバムです。先だってパティ・スミスのニューアルバムも出たことで、なんだか浮き足立ってしまうような興奮をついつい覚えてしまうのは僕だけではないでしょう。

 さて今回の『エクスタシー』ヴェルヴェット・アンダーグラウンド時代のシ『スター・レイ』を彷彿させる 18 分に及ぶ力作『ライク・ア・ポサム』を筆頭に 14 曲 77 分の大作になってます。でも長さは感じられない。個人的にはアナログ時代のいわゆる 2 枚組や、やたらと曲数の多いアルバム、最近のボーナストラック攻勢にはやや違和感を覚えてしまうたちなんですが、本作は長時間は長時間ながら、すっきりとした仕上がりで(決してあっさりしているわけではない)、あっという間に終焉を迎えてしまいます。

 いろいろなルー・リードに関する論評や、ライナー・ノーツを読んだりすると語られる各時代における彼の変換や転換なのですが、(本作のライナー・ノーツにも前作『パーフェクト・ナイト』が集大成であり本作『エクスタシー』は 21 世紀に向かうルー・リードの新たなスタートに位置づけられるようなことが書いてあった)個人的に言わせて貰えば全くルー・リードは変わっていない! 相変わらずのキーボードレスのシンプルなサウンドもさることながらゴリゴリした生々しいギターの音、先述の『ライク・ア・ポッサム』の様な永遠に続くかと思わせるようなハードなリフレイン、アコースティックでメロディカルな小曲、そして一瞬気恥ずかしくなるほどの軽快なロックンロール。バナナのジャケットのあのアルバムから、やはり変わってないのですよルー・リードは。

 プロデュースは、ハル・ウィルナー。この人は 15 年ほど前にクルト・ワイルのトリビュートアルバム『ロスト・イン・ザ・スターズ』をプロデュースした人で、このアルバムの中でルー・リードは『セプテンバーソング』を披露しています。少しメンバーを変えて映画にもなったので、知っている人も少なくないと思うんですが、このルー・リードの『セプテンバーソング』はクレジットがなかったらルー・リードのオリジナルといわれても解らないぐらいの出来でして、今回新作の製作に当たって、ハル・ウィルナーを起用した所以が伺いしれて興味深いです。

 変わらない、と先ほども言いましたが、ルー・リードも 58 歳だそうです。ある意味、ミック・ジャガーよりも、キース・リチャーズよりもたくましく、おそれ多く、そして信頼できるロックンロール爺いだと思い知らされました。このままルー・リードが変わらずに進化していく様をいつまでも見続けていけることを切に願う 1 枚でした。いわゆるロックミュージックというものが決して年寄りにできないものではない、ということを証明して見せたのは、ストーンズよりもむしろ、ルー・リードだったのではないかと、くだらないことに思いをはせてしまうのです。

kawakita Original: 2000-Apr-21;

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