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 Diary 1999・12月5日(SUN.)

オイシンレビューの感想

 ソバさんもBBSに書き込んでくれていたが、ヤマネくんがメールをくれ、『ソドムの市』がビデオ化されている事を教えてくれた。これは有益な情報をありがとうございます。

 で、約束通りオイシンレビューの感想を書く。『ポリーマグー』は私が半ば無理矢理オイシンに見せ、レビューも書かせたようなもんだから、その責任をとってという意味あいもあるが、予想外によかったからだ。なにが良かったって、その「素直さ」である。「素直」というのは実は得難い徳であり、重要なものだと私は思っており、これがあるだけで私はその人を尊重する。私がなんやかんや言ってオイシンのことをかまっているのも、オイシンがこの得難い徳を持っているからかもしれない。

 と、誉めまくってやろうと思っていたら、今日の『アポロンの地獄』のオイシンレビューを読んで、思わず開いた口がふさがらなかった。「やっぱりオイシンってとてつもなくアホやん」。別に「素直」という徳が失われたわけではない。「素直」に自らのアホさ加減をさらけ出しているのが『アポロンの地獄』のオイシンレビューだ。これだからこそ「素直」という徳は尊重すべきなのだが、それにしてもアホすぎるぞオイシン。やっぱりオイシンって映画の見方が分からない人間だったんだなあ。ではそこら辺の事を考慮にいれて若干アドバイスを。

 とりあえずな、オイシン、「一般人の見る〜」という題名をやめなさい。何故か。これはオイシンにかぎったことではないけれども、自らを「一般人」と規定して書かれた文章というのはとにかく駄目なものが多い。いやらしい。それは「一般人」などというものは、この世にいないからなんだけれども、そう書いてもオイシンには分からないだろうから、もうちょっと違う言い方をする。

 オイシンは覚えているかどうか分からないけれども、前にこんな会話をしたよねえ。田舎の友達だったか、大学の友達だったか、そこらへんはよく覚えていないんだが、オイシンはその連中と自分は違う、と主張した。彼等は車とか女の子にしか興味はないが、自分はそんなものに彼等ほど興味はないので、話を合わせるのに苦労する、と。その時にオイシンはその連中の事を「一般人」だか「普通の人」とか言っていたぜ。「一般人」「普通の人」はオイシンの方じゃなかったのか?

 つまりどういう事がいいたいかというと、この世に「一般人」などという人種はなく、様々な分野において少数派と多数派がいるだけだ、という事。そして往々にして人は、自分が少数派に属する時は多数派を「何も分かっていない一般人」として見下し、多数派に属する時は少数派を「常識感覚を失った特殊人」として自らのありかたに居直る。だから自らを「一般人」と規定して書かれた文章は、現在の自分に対する居直りと、自分より優れたものに対する僻み根性が混在したものになりがちだ。

 別にオイシンの文章がそうだといっているわけではないけれど、そういった気配もちらりと見える。例えばオイシンはレビューのなかで自分の事を「前衛嫌い」「ハリウッド好き」としていて、それを『ポリーマグー』が面白くなかった理由のひとつにしているけれど、『ポリーマグー』大絶賛のババさんの方がオイシンよりずっとハリウッド映画が好きだし、ハリウッド映画をみているはずだぞ。大体オイシンは「ハリウッド好き」といえるほど映画を観ているのか?

 だからここで私は提案したいのだが、「一般人の見る〜」というのをやめて「映画の見方が分かっていない人の見る〜」にすればどうか。その方がいいと思うんだけど。実際オイシンは映画の見方が全然分かっていないわけだし。ちなみに映画に限ったことではないけれども、ある文明の産物を見たり聞いたりするにはなんだって一定の訓練が必要だ。オイシンだって小さい頃から「映画的なもの」に触れていたおかげで、無意識のうちに映画の見方を学んでいるだぜ。ただその訓練があまりにもお粗末だったので、映画の見方がいまだ分かっていないというだけ。

 こういう話がある。ある未開部族に映画をみせたところ、彼等はストーリーなどをまったく理解せず、「鳥が」とか「雲が」とかいっていたそうだ。つまり背景に写っていた「鳥」とか「雲」とか、彼等が日常気にしているものにだけ反応して、それしか「見えて」いなかったというわけだ。オイシンの『アポロンの地獄』レビューって、この「鳥が」とか「雲が」とかいう意見に毛がはえたようなもんだと思うぞ。って言い過ぎ?

 もちろん映画はいろんな見方をしていいんだけど、それにはやはり「興味の主軸」がいると思うぞ。例えばベッチみたいに「興味の主軸」がはっきりしている人間が、マリア・カラスだけに注目して『王女メディア』をみるのはいいと思う。まあ、オイシンの場合はなんだかわけのわからないうちに前売りチケットを売りつけられたんだけど。だから、う〜ん、まず「正統的」な映画の見方を身につけて下さい。オイシンはどうやら得難い徳を持っているようだから大丈夫でしょう。

 ところで最近はベッチの日記が面白い。特に 12 月 4 日、つまり「ノーザンヴォイス!!」の時の日記は面白いよ。同じイベントの事を違う人の日記で読むのは面白いです。うんうん、確かにダンスを愛する人達に囲まれてダンスをするのはこの世の至福だよね、ベッチ。

小川顕太郎 Original:2000-Dec-7;