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2016年02月17日(Wed)

響け!/オデッセイ etc

2月8日~2月15日

響け!ユーフォニアム

アニメ「響け!ユーフォニアム」全13話+番外編1話を観ました。
やー、凄かった。私は正直、かなり圧倒されました。これ、“表現”といふ事に限れば、今までのアニメの最高峰なのでは?って、私はそれほどアニメを観てゐる訳ではないので、私の観てきた範囲で、といふ事ですが・・・それでも、凄い。若い頃にゴダールや小津を観て「すげー!」と震へたあの感覚が甦ってくる。まぁ、私がアニメを観始めたのがここ数年なので、アニメの表現といふ事に関して過敏になってゐる所はあると思ふのですが(実写映画に関しては、すれちゃって少々の事では驚きも感動もしない、といふのがあるとは思ふ)、そんな事情はともかく、こんな映像体験ができるなんて・・・アニメを観る様になって良かったー!

まづ、この作品の画面の質感がある。フィルムで撮られた昔の良質な日本映画を観てる様な質感を表現してゐる。これって、現在では実写映画の方でも得難い感覚なんだよね。今は、やたら機材も良くなって、デジタルになって、CGも気軽に使へるし・・・とか色々な事情があって、最近の実写ってちょっと絵がキレイすぎる。と、感じる事が多々ある。それはそれでいい事もあるけれど、残念な事も多々ある。あの少しノスタルジアを含んだかの様な質感・・・あれが観たい。と、それがこの「ユーフォ」にはある。
実はこの作品と同じ製作陣が作った劇場アニメ「たまこラブストーリー」を観た時に、わ!なんだ!昔の日本映画みたい!と驚いたものなんだけど、その時は、映画好きな制作者が昔の日本映画を模して作ったのかな、ってな程度の認識だった。しかし、そんな単純なものではなかったのであーる。
たとへば、さういった昔のフィルム的な感覚を表すものとして、被写界深度の浅さがあるけれど、これはピントのあってる部分が狭く、周りが暈けてしまってゐる、といふ事。これを多用してゐるんだけれど、これは単に“昔のフィルムっぽさ”を出すためではなく、山田尚子(シリーズ演出)によれば「青春の視野の狭さと、余裕のない瞳孔の開いた感じ」を出すために使ってゐる、と。確かに、この被写界深度の浅さと、強烈な光と闇の表現が重なって、少女たちの内面が生々しく迫ってくる。といっても絵だからさ、変に生理的な生々しさではなく、もっと精神的な生々しさ。
あと、これは山田尚子が演出に関はった作品でよく言はれる事だけれど、セリフがいい。男性には絶対に書けないセリフ、とか言はれてゐて、それはどうかは分からないけれど、確かに妙に論理的だったり説明的だったりする所がなく、パッとセリフだけ読めば意味が通ってない様な、感覚的なセリフが多い。でもそれが、少女たちの“リアル”と響き合ってゐるんだよねー。
演出も、このセリフに見合ったものがなされてゐて、少しづつエピソードを論理的・効率的に重ねていってクライマックスに持っていく、といふ現行ハリウッド的なものではなく、もっと感覚的で偶然的。ポリフォニックで味はひ深いものなってゐて・・・それがいい。
そしてなにより、画面がキラキラと輝いてゐる!これ、ほんとに輝いてゐて、よく観れば、画面の至る所にオーブ(たまゆら)が舞ってゐるのです。
オーブとは、空気中の埃や水蒸気に光が当って乱反射したものが写真に映り込んだものですが、これ、スピリチュアル方面では「霊的なものが写真にうつった!」と言って大喜びしたりするんですよね。でも、まぁ、スピリチュアルもアートも“表現”といふ地平に於いて同等と看做すなら、これは少女たちのスピリチュアルが表現されてゐる事になるのです。実際、眩しいんだよ、彼女たち。

かういった次第で、私は豊潤な映像体験をさせて貰ひ、大満足です。さっそく第二期の制作が決まったみたいなので、凄く楽しみ。でも、その前に劇場版の公開がある。これはテレビシリーズの総集編的な内容になるらしく、要するに13話を2時間ほどにまとめる訳で、大丈夫かいな・・・といふ不安は少しあるんだけど、この製作陣なら大丈夫かな・・・。なにより、あの表現を大きなスクリーンで観られる事を思ふと、もう楽しみで、楽しみで。
4月の公開が待ち遠しいぞ!

オデッセイ

MOVIXにて「オデッセイ」を観ました。マット・デイモンが火星にぼっちで取り残されて、なんとか生き延びる話・・・と、「インターステラー」に続き、またしてもマット・デイモンが異星にひとりぼっちな話。監督はリドリー・スコット。2時間半の大作ながら、だれる事なく一気に見せる手腕はさすがで、とても楽しく鑑賞致しました。
しかし・・・・・・なにか、物足りない。こんな事をいふと「またか!」と呆れられさうですが、はっきり言って「響け!ユーフォニアム」を観た後では、なーんか物足りないのです。
確かによく出来てゐる。展開も淀みないし、緩急もバッチリ。映像も美しいし、役者陣も素晴らしい。でも・・・なにかいまひとつグッとくる所がない。たとへば・・・これ原作の「火星の人」が凄く評判になった作品なんだけれど、私は読んでゐませんが、聞く所によると、かなりの理系オタク小説らしい。つまり、火星で生き延びるにはどうすればよいのか?といふ事が、考へ詰められて、そのアイデアがいっぱいに詰められてゐる、と。要はかなり地味ながら知的な刺激に満ちた作品である、と、タケダくんなんかからも聞かされてゐて、私はそれを楽しみにしてゐた訳。楽しみにはしてゐたんだけれど、でもそれって一般受けしないよなぁ、大丈夫なのかなぁ、とも思ってゐた訳。で、実際に蓋を開けてみると、その理系的な側面はそれほど描かれず、むしろ活劇の比重の方が高い。まぁ、上手だよね。これならみんな楽しんで観られるし、そこそこ知的な刺激もある。でも・・・それではなーんか物足りないんだよなぁ。
それとか、火星の基地に残された音楽が70年代音楽(主にディスコ)しかない、といふ設定で、それが火星で鳴り響く・・・といふのも面白いんだけど、これって「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」でやってたよね。しかも、「ガーディアンズ・・・」の方が上手だった・・・とか。
つまりは、ハッとする様な表現や飛び出た所がない。既成の表現を使って、うまーく、効率的に、物語を語ってゐる。いや、別にそれが悪いと言ってゐる訳ではない。ハリウッド大作ともなれば、そんな腕が求められるし、実際、私の周りでも「オデッセイ」を観た人たちはみんな大満足!ってな感じ。劇場もいっぱいだったし、まぁ、優れた作品なんではないでせうか。
ただ、私的にはやっぱ物足りない。「響け!ユーフォニアム」みたいな作品が観たいですね!!

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