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2013年06月21日(Fri)

聖なる酔っぱらひの伝説 読書・文学

ヨ−ゼフ・ロートの「聖なる酔っぱらいの伝説」池内紀訳(岩波文庫)を読みました。
ヨーゼフ・ロートといへば、何と言っても「ラデツキー行進曲」でせうが、なかなかの大冊といふ事もあり、我が家の本棚でもう何年も開かれる事もないまま眠ってゐます・・・。
いやしかし、あまり文学なるものを読まない人にとっては、やはりこの「聖なる酔っぱらひの伝説」の方が有名かもしれません。なんといっても、こいつはエルマンノ・オルミ監督によって映画化されてますから。
私も公開当時、お、ルトガー・ハウアーやん!これは是非観にいかねば!・・・と勇み立ったものの、結局行けず。未見のまま現在に至ってゐます。
なんか、ヨーゼフ・ロートと縁が薄いなぁ。

それはともかく、「聖なる酔っぱらひの伝説」は確か白水Uブックスで出てゐたと思ふのですが、先日本屋でこの新しく出た岩波文庫版を見つけ、つい買ってしまひ、ついつい読んでしまったのです。まぁ、読む時なんかこんなもんだわね。
すると、予想通りといふか何といふか、凄く面白かったのです!

五つの小説が入ってゐるのですが、まづはロートの初めての小説といはれる「蜘蛛の巣」。ナチス台頭直前のドイツの様子を描いてゐるのですが、執筆時、まだナチスは勢力獲得前だったにも関はらず、見事にその後の展開まで見通した様な作品となってをります。私は文学史的な事にはとんと疎いのですが、これはヒットラーの登場を予見した作品とされてゐるのではないか?あ、ちなみに知らない人のために書いておきますと、ロートはユダヤ人で、ナチス台頭後は国外亡命、最後はパリで客死してゐます。彼がいかに鋭い観察力と知性、感性を備へてゐたかが窺へる作品です。
あとはユーモアね。とても軽快な文章なのですが、全体にユーモアの気味があって、けっこう笑ひました。

続いて「四月、ある愛の物語」と「ファルメライヤー駅長」の2本。どちらも愛の儚さ、美しさ、残酷さを描いた作品で、これも幻想的なまでに軽い文章で綴られ、上等なお酒を飲んだ時の様な、心地よい酩酊感に襲はれます。

そして「皇帝の胸像」。これ、私、大好きです。オーストリア・ハンガリー帝国が崩壊した後も、ずっと帝国を愛し続けた貴族の話なんですが、反動的な生き方の愚かしさと美しさが見事に描かれ、若き日に初めて荷風を読んだ時の様な感動がありました。かういふのを読むと、自分はつくづく反動的な人間なのだなー、と思ってしまひます。
(「ラデツキー行進曲」は、これを長編化した様な作品のはずなので、是非読まねばならないのです。つーか、だからこそ何年も前から購入して置いてる訳ですが・・・)

最後が「聖なる酔っぱらひの伝説」。これは、とても幸福な作品です。どうやらこれが絶筆らしいのですが、とすれば、なんとも出来過ぎた話だ!
これを読めば、その作品のみならず、ロート本人にも興味と愛着が沸いてきます。
この作品では、主人公はずうっとペルノーを飲んでゐるのですが、私も久しぶりにペルノーが飲みたくなってきました。
しかし、私はその昔、バロウズの「クィア」を読んだ後、ラム・コークを飲み過ぎて身体を壊しかけた事があったので、気をつけねばなりません。ペルノーも、けっこう強いですから。
さういへば、マツヤマさんも池澤夏樹の小説を読んだ後、ハーパーをがぶ飲みして身体を壊した事があった、と言ってゐたので、みんな似た様な事をしてるんですね。

聖なる酔っぱらひに幸あれ!

Comments

投稿者 マツヤマ : 2013年06月23日 10:32

久しぶりに「マシアス・ギリの失脚」を引っ張り出して、パラパラとページをめくってみました。ケッチ&ヨールというゲイのカップルがハーパー12年を毎晩1本空けます。「オレも!」と思い2日に1本のペースで飲んだら口の中がただれ、下痢が続きました。けっきょくハーパー12年の美味しさは、他所で飲んで初めて分かりました。

投稿者 元店主 : 2013年06月24日 00:01

やっぱセットが大切ですよね。

ちなみにマツヤマさんは今でもハーパー12年を愛飲してられますが、私はラムコークを飲む事はまづありません。何故なら、私にとってラムコークを飲む事は、身体を破壊すること、非常にデカダンな、滅亡への気分に浸りながら飲む事だからです。
それでも、たまーに、どうしようもなくラムコークが飲みたくなって、焦ることがあります。なんなんでしょうか。

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