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2011年04月14日(Thu)

婚前特急 映画

日本映画がつまらなくなった。テレビ局製作の映画とか、ドラマの映画版とか、そんな下らないといふかそもそも映画と呼べるのかどうかも疑問な代物ばかりで、さらにそんなものが結構ヒットしてゐて、もう日本映画界は終はったー!・・・などと騒いでゐる昨今ですが、その一方で、こんな時にこそ実は良質な日本映画も出て来てゐるのではないか?単にそこまでフォローできてないだけなのでは?といふ気持ちもあり、確かにババさんの様に片っ端から映画を観て、拾ひ物を教へてくれる存在を失った今、さういった可能性は十分ある訳で、どうしよう。ってか、んなもん、自分で観にいったらいいやん。ちょっと大変ではあるが・・・。といふ事で、今年は積極的に日本映画も観てみようかと、考へた次第ではあるのです。

そこで、まず候補にあがったのが「婚前特急」。何故かといふに、この映画、監督を始め、出演者のほとんどが知らない人だったからです。監督・脚本は前田弘二。短編はいくつか撮ってゐて、一部では話題になってゐた人らしいですが、これが劇場映画デビュー作。また、主演は吉高由里子。オリコンの「2010年期待の女優ランキング」で一位になった人らしいですが・・・知らん。他の出演者も、杏、浜野謙太、石橋杏奈・・・と知らない人だらけ。加瀬亮と榎本孝明くらゐか、知ってるの。
さらに、如何にもの単館系映画、ではないのが気に入りました。ま、単館系映画では、そら常にそこそこの良作は作られてゐるでせうから。これはMOVIXで観ました。ロードショー映画です。
もひとついふなら、題名がいい。「婚前特急」って、どうしたってルビッチの「極楽特急」を思ひ起こさせるでせう。
これは、もしかしたら、いいかも。もしダメでも、まー、ネタにするからいいや。と、軽い気持ちで行って参りましたー。

お、驚いた。これ、めっちゃ面白いやん!つーか、なんとも良くできた映画です。吉高由里子演じる主人公の池下チエは、五股をかけてるチョイ美人のOLさん。性格は、ワガママ、お天気屋。協調性がなく、利己的・合理的で、周りの空気が読めません。美人だからか、他人を見下してる様な所があります。要するに、結構最低の人間なのです。なのですが、これがとても魅力的に描かれてゐる。最低の人間を(正確には、世間一般の基準では最低と看做されてしまふ様な人間を)魅力的に描くのは、芸術・文学においては大切な事ですが、この映画はそれを易々と達成してゐます。映像も良くて、何気ない東京の街並や、人々のチマチマとした部屋の中が、とてもかっこよく撮れてゐる。そして何より、全体に溢れる圧倒的な幸福感!
これは素晴らしい映画だ、と、MONOBRIGHT(←このグループも知らない!)によるエンディングテーマ曲を聴きながら、映画館の中で感心しました。

しかし、最初にこんな当りを観てしまって、大丈夫なのだらうか。もしかして、今の日本映画はこれぐらゐの水準のお宝がザクザクあったりして!とか、思って焦ったり、慌てたり、して。

ま、ボチボチ観ていきます。とりあへず、前田弘二監督(と吉高由里子)はチェックしましたー。

Comments

投稿者 シマムラジョー : 2012年11月13日 18:48

こんにちわ、いつもブログを楽しませていただいてます!結論から言って…結構微妙に感じちゃいました。
もちろん良い部分もたくさんあったし、嫌いにはなれない映画なんですけど、何て言うか、もうちょっと面白みを加えることは出来た映画なんじゃないかな…と思いました。

特に思ったのが、1つ1つのシークエンスが長すぎる、という点です。
もうちょっとカットしたり省略したり出来たと思うんですけど…。
いえ、ちゃんと必然性もあって、例えば吉高さん演じるチエ、石橋杏奈さん演じるミカ、浜野謙太さん演じる田無タクミさん、加瀬亮さん演じる西尾みのるの4人でミカの部屋で盛り上がって、田無がミカに婚約を申し込んだり、かるたを詠んで田無・ミカ・みのるの3人がキャッキャするシーンでのチエだけ1人取り残されている感じは、「気まずさ」を見事に作り出していて(個人的にここのシーンは一番好きだし)、長回しする必然性はありますよ。必然性は分かりつつも…それでも長すぎますよ…。
例えば終盤に最大の盛り上がりを見せる田無とチエの大喧嘩シーン。その家に行きつくまでの田無とチエが歩くシークエンスはあまりにも長すぎます。
2人の「すれ違い」、そして徐々に縮まっていく「距離感」を表現しているとは思いますが、それでも長すぎますって。もっと省略出来たと思います。

このように、物語上それなりの必然性は感じますけど、必然性の許容範囲を飛び出すほど長回ししすぎて、もはやくどくなりすぎちゃってると思うんですよね。だから結果的に物語のテンポが悪く感じちゃって、僕はそこまで楽しめなかったんですよ。
エンディングまでもがこのくどい長回しが使われてて、この映画の主題歌となっている「DANCING BABE」も凄く良い曲だと思うんですけど、それが始まるタイミングが本当に遅すぎる。疾走感あってテンポ良い曲なのに、この曲が始まるタイミングが唐突すぎです。

今作の物語は「チエと5人の男たち」みたいな予想とは違って、
意外や意外「チエと田無タクミ」で基本的に物語が進んでいくんですよね。他の4人はこのエピソードにくっついて物語を盛り上げる感じです。
デメリットの多い奴からフッていこうと思って田無に別れを告げるも「俺たち元々付き合ってないじゃん。」という田無の言葉がきっかけでどんどん田無とのエピソードが盛り上がります。
これ自体は良い展開だなと思いました。
なんですけど、あまり2人に共感出来ないし(そういう人物なのは分かるけど)、観ていて途中から「正直どうでもいいなー」って思ったりもしちゃいました。
もちろん物語上のキャラとして吉高さんと浜野さんの演技力は素晴らしかったと思いますけど、
ただ、それを踏まえた上でも僕が気になったのは、吉高さんの反省のしなさぶり、吉高さんに対する物語上の決定的な制裁が無い点です。チエ自身による「自発性」が生まれてないんですよ。
この物語に自発性が無かったら駄目だと思うんですけど…。
自発性が無いから吉高さんは成長してないように見えるし、ただ単に田無が良い奴っていうか、
途中からは田無の物語に後半から完全に乗り移っちゃってますよね…。
田無がいかにチエにぶつかっていくかみたいな。
そこにチエ側の歩み寄りは感じないんですよ。
もちろん田無の家に着いた時に、いつの間にか田無の家の鍵しか鍵入れに残ってないような「歩み寄りを感じさせる描写」はありますけど、その歩み寄りはその後の田無との大喧嘩でもっと描かないとだめだと思うんですよ…。
この大喧嘩のシーンではやっぱり「田無の熱い想いがチエに伝わった」ってだけで、
ここに関して自発性、チエが言う本当の相手を「見つけた」感はありますかね…。
いや、理解力が無いくせにだらだらと書いてしまってすいません…。

一番気になったのが、田無のデメリットにあった「たまに意味もなく鼻血を出す」という特徴。ほとんどの人が映画を観る前からやっぱり「何だかんだで田無と結婚するんじゃない?」って予想すると思うし、僕も予想してたのでもちろんこの「無意味な鼻血」が物語上で何かしら絡んでくるんだろうな…と思うじゃないですか。
でもこのデメリット、結局最後まで使われることなく終わってしまうんですよ。
この「無意味に鼻血が出る」って凄い良い設定だとは思うんですよ。
それに正直この映画、吉高さんの台詞も浜野さんの台詞も基本的には何度も言ったことの繰り返しなんですよね。最後の田無宅の喧嘩でも。イマイチ目に見えて分かる「変化」がなく、物語の最大のポイントがぼやけてるんですよ。
で、結局2人は結ばれるんですけど、ここでもし「田無が鼻血が出るのは真剣になった時に出る」みたいな設定が実はあったりしたら(もちろん前半でそれなりの伏線はさせといて)、実際に終盤で一応山場となる田無の家の大喧嘩シーン。ここで田無が鼻血が出でいたりなんかしたら、観ていて凄く分かりやすいと思ったんですけど…。
いや、ちょっと自分勝手すぎますけど、とにかく言いたいのは「鼻血」というインパクトあって視覚効果ある設定を物語に入れてこなかったのはかなり残念に感じました…。

細かい部分で言うと、物語全体の時間経過は分かりづらかったですよね…。
これに関しては、物語上のチエの「理想の形」を示す、杏演じる「トシコ夫婦」がちょくちょく挟まれますけど、
せっかくトシコは妊娠しているんだから、「幸せが育まれていく過程」と同時に「時間の経過」を示す2つの意味も込めて、物語が進みにつれてトシコのお腹を大きくしていけば、凄く時間の経過が分かりやすくなるのになぁ…と思いました。
結局終盤の田無の家での最大の山場を迎える日にトシコの部屋でチエは目覚めるんですけど、その時でもトシコのお腹は全然変わりないし、その日からラストの結婚式(ここでトシコは赤ちゃんも生まれているので1年前後経過している)まで一気に時間が飛ぶのはちょっと飛びすぎなんじゃ…と思いました。
題名の「婚前特急」にも繋がってこないと思うんですけどね…。
いや、確かに何カ月もかける物語ではないのは分かりますけど、とにかく言いたいのは「時間の経過が分かりづらい」ってことです…さすがに妊娠の経緯を追っていくのは無理があると思います…。


などなど、色々文句は言いましたが、正直嫌いにはなれない映画です。
何と言っても主人公役のチエ役を演じた吉高さんはまさにこの役にピッタリで、今作が代表作と言ってもいいくらいに吉高さん本人の魅力を全部出し切っていたと思います。今後もこういうコメディ系に出てほしいです。
更に準主役と言ってもですが、田無タクミを演じた浜野謙太さんも抜群の演技力・風貌で、ああいうヘラヘラしてる人は現実にいっぱい居ますよね笑。でも何か憎めないあの雰囲気、最高でした。
そして個人的にはミカ役を演じた石橋杏奈さんは超良かったです。あんなに出演時間が長いと思ってなかったので、大満足です。
黒髪ポニーテールも可愛かったんですけど、基本的な格好が「Tシャツにパーカー、コンバースのハイカットスニーカーにタイトじゃない普通サイズのジーパン(裾捲り)、そしてメッセンジャーバッグ」という社長の娘という人物設定にギャップありまくりの格好が大変萌えました。ラストは加瀬亮さんと付き合ってるって感じに終わりますよね…ぐぬぬ。

この映画には面白い部分も多くあって、まず基本的にチエと田無のやり合いは常に愉快だったし、
小学生の「やりまん」のシーンでの知ったかぶりする小学生も可愛くて面白かったし、
終盤、田無の家の壁を突き破って隣のおばあちゃん宅に入ってしまうシーンでの、全く動じないおばあちゃんも面白かったんですが、何故か良い雰囲気に物語が展開していく一連のシーンは凄く滑稽だったし、唐突ながらも2人に教訓を与えている良いシーンでした。
また、途中の「三丁目の夕日」パロディも面白くて、箱のみ(指輪なし)を差し出すシーンですでに「いやいや、三丁目の夕日じゃないんだから…」と思いつつ、ミカもそれを受け取って指にはめるシーンで「まんまパクってるじゃないか!」と笑えました。
どうやら調べてみたら今作「婚前特急」と「三丁目の夕日」の制作プロダクションは同じみたいです…納得ですね。
後は田無が酔った女性をタクシーに連れ込もうとして、そこにチエが登場してきて口喧嘩をするシーン。その際に「ずっと停車しているタクシー」と、「泥酔して地面に倒れている女性」が画面に見切れ続けるのは可笑しくて笑っちゃいました。この泥酔している女性の方、鈴木なつみさんでした。(「川の底からこんにちは」「劇場版 神聖かまってちゃん」に出演)

ついでに「劇場版 神聖かまってちゃん」にも出てた川屋せっちんさんも今作では「パンを買いに来るお客さん」として出ていました。僕が見落としているだけで意外に名脇役だったりして。

というわけで、言いたいこともたくさんある映画なんですけど、
映画の全体のテイストが実に心地よく、何といっても面白い場面がたくさんあったし、演じる役者陣の方々が魅力的でハマり役ばっかりだったので、決して嫌いにはなれない映画でした。ただもうちょっと省いてコンパクトに収められる映画だとは思いましたよ。
でもこの映画を観て何かを思う「良いきっかけ」にはなる映画だと思います。

投稿者 元店主 : 2012年11月14日 02:20

シマムラジョーさん こんにちは!

いきなりの熱い書き込み、ありがたうございます。ひとつの映画に対してここまで熱心に意見を述べるなんて、素晴らしいです。圧倒されました。
私はこの映画を観たのはもう1年以上前だし、そもそも最近は映画なんて観るはしから忘れていってしまふ状態なので、満足な返事ができないかもしれませんが・・・。

ジョーさんのコメントを読んでゐて、なるほどなー、と思ったのは、私とジョーさんでは映画に対するスタンスが結構違ふな、といふ事です。
ジョーさんはこの映画の欠点として、時間処理の仕方が下手(テンポが悪い、時間の経過が分かりにくい)、登場人物に感情移入しにくい、といふのをあげられてゐます。さう言はれるのはよく分かるし、私もその指摘には納得します。
ただ、私はテンポの良い映画といふのはあまり好きではなく、なんだかよく分からないひっかかりのある映画が好きなんですね。あの最後の大喧嘩に至る前の二人が街を歩くシーンとか、実は私的には最も印象に残ってるシーンでありまして・・・、あそこ、大好きです。
あんまり効率よく話を語られるより、なんだかよく分からない監督の拘りを感じさせる、不必要(?)なシーンがある映画の方が好きなのです。

あと、私はあまり登場人物に感情移入するタイプではないので・・・、できればあまり感情移入できない映画の方が好きです。クール、とか思ってしまふ。
ちなみに、チエにも田無にも、私は全く感情移入できません。

あと、ジョーさんの指摘で、鼻血に関するエピソードがもっとちゃんとあれば良かった、といふのはポンと膝を叩きました。さうですね!そこはもっと突っ込んで欲しかったですね。

実はこの映画、私は観た当初大興奮して、周りの人間に「傑作だ!傑作だ!」と触れ回ったので、私の周りでは結構の数の人が観てくれたんですね。でも、みんな「・・・」てな反応で、とても寂しい想ひをしたのです。だから、ジョーさんの様に(私とは意見が違っても)熱く語ってくれる人が居るのはとても嬉しいです。

前田監督の次回作、楽しみですね!

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