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2007年09月12日(Wed)

ドラクル 歌舞伎

 シアターコクーンにて『ドラクル』を観ました。

 あ、いや、『ドラクル』を観に東京まで来たんぢやないですよ。歌舞伎を観に、玉三郎の『阿古屋』を観にきたのです。が、色々と事情がありまして、今回は一日早く東京に来たのです。すると、おお! 『ドラクル』がやつてゐるぢやありませんか! 七月大歌舞伎で海老蔵(怪我で休演)を見損ねた私とトモコとしては、リベンジするべきではないでせうか。と、軽い気持ちでチケット情報を見ると、おお! なんと全て売り切れではないですか! むむー、これは、なんか悔しい、と、意地になつてオークションサイトをみると、おお! 沢山出てゐるではないですか! …で、定価より安くでチケットをゲットし、渋谷くんだりまでやつてきたといふ訳です。

 まー、ね、覚悟はしてゐたつもりだつたんですよ。つまらないんぢやないか、と。でも、それでもいい、海老蔵を楽しまう! 宮沢りえが生で見られるならいいぢやないか! と、相当な覚悟をして行つたつもりなのですが……こ、これは、酷い!!! なんでこんな高校の文化祭みたいな芝居をひとり1万円も払つて見なくてはならないんだー! と、叫びさうになりました。

 私は海老蔵の贔屓ですし、宮沢りえも好きなので、悪くは言ひたくないんですよ。でも、これは、あんまり…。お話がつまらないのはいいです。覚悟してましたから。ただ、全てが薄ッぺら過ぎる、底が浅過ぎる。…いや、ね、これ『ドラクル』とか言ひますが、ドラキュラ侯の話ぢやないんですよ。つまりヴラド・ツェペシの話ではなく、はたまたバートリ・エルジェーベトの話でもなく、ジル・ド・レエの話だつたんです。それはいいですよ、ジルも“青髭”と言はれて吸血鬼扱ひされた人ですから。そのジル・ド・レエ役が海老蔵。このジル海老が、自分の崇拝してゐたジャンヌ・ダルクが無惨にも火刑に処された事に怒り、神を呪ひながら吸血鬼と化して300年ほど彷徨つてゐる、といふ設定です(ちなみに知らない人のために記しますと、ジルは本当にジャンヌの右腕としてオルレアンの解放戦争を闘つたのです)。そこに現れたのが、ジャンヌの生まれ変はりぢやないかと思はれる聖女宮沢りえ。彼女とともにジル海老は再び神を信じてみようかと思ひ立つ……てな内容でして、この手の話が好きな人にとつては「あー、あー」てなもんでせう。

 ま、だからそれはいいんですよ。そんな事より、つまりはこの話はそんな訳で、神に関はる話になつてくる訳です。で、この脚本を書いた人、長塚圭史さんですか、は多分、あんまり一神教や信仰の事が分かつてゐません。それなのに、神や悪魔や罪や懺悔や祈りやなんやかんやのオンパレードで、これがもう薄ッぺらくて、底が浅くて、たまらないのです。私が高校の文化祭と言つたのもそれで、ジル・ド・レエに関する本や萩尾望都の漫画を何冊か読んだ一寸才気走つた高校生が、頭に熱がきて思はず書き上げてしまつた、といつた感じなのです。まるで八百万の神の様な“GOD”、まるで妖怪の様な“悪魔”、まるで禊の様な“懺悔”……。私は恥ずかしくて居たたまれない気分でした。

 やー、海老蔵なー、こんなもの出るより、七月大歌舞伎をちやんと勤めあげろよ、と言ひたくなりました。

 あ、ただ海老蔵はやはりダントツに声が出てゐて、それは面白かつたです。ちょいと歌舞伎風の発声もあつたし。

 私はその後、渋谷駅前のTSUTAYAに行つて、Kダブの自伝『渋谷のドン』(講談社)を購入しました。みるからに内容の薄さうな本ですが、渋谷で買へたのが、なんか嬉しい。

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