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2007年07月09日(Mon)

環境問題 憂国, LOHAS

『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』武田邦彦著(洋泉社)を読みました。

 環境問題が利権化してから久しいです。エコもロハスも利権と政治に塗れて激しい臭気を放つてゐますが、それなのに、といふかそれ故に、ますます世に跋扈してゐるといふ惨状を呈してゐます。そんな状況に厳しいメスを入れた快著! と、世間では話題になつてゐるらしい本書。確かに素晴らしい仕事ぶりです。が、私は読みながら一抹の虚しさを感じてしまひました。だつて、どうせこんな事を言つても無駄やん! といふ気持ちが、鬱勃と沸いてきてしまつたからです。

環境問題はなぜウソがまかり通るのか
武田 邦彦
洋泉社 (2007/02)
売り上げランキング: 48

 たとへば、本書は冒頭にペットボトルのリサイクルについて述べてゐます。地球の資源を無駄遣ひせず、ゴミの量も減らすため、ペットボトルをリサイクルしよう! と世間では声が上がつてゐる様です。が、これがとんでもない妄言。ペットボトルのリサイクル運動が始まつてから、資源は7倍ほど無駄遣ひされ、ゴミの量も7倍ほど増えたさうです。ええ! なんでさうなるの? と、思はれた方、あなたは初心ですねェ…。こんな結果になるの、最初から分かつてゐたんですよ。だつて、今までも似た様なことがあつたんですから。

 個人的な思ひ出から語ると、10年程前に牛乳パックのリサイクル運動がありました。これも始まつた理由はペットボトルと同じ。資源の節約とゴミの削減です。で、結果も同じ。資源は無駄遣ひされ、ゴミは増えました。つまり、環境汚染が進んだ、といふ事です。え? なんでさうなるかッて? それは、簡単に言へば、リサイクルするのにも資源を使ふからです。ペットボトルも牛乳パックも、リサイクルしてまた使へる様にするのに、大量の石油や薬品を使ひます。その過程でゴミや有害物質がまた大量に出ます。で、ここが生臭いのですが、“環境問題”の様な時代の正義を看板にした商売は利権化する。すると、正義の看板の陰であらゆる汚い事が行はれるのです…。

 実を言ふと、10年前とはオパールを始めた頃。その頃に、オパールで使つてゐる牛乳パックはどうなつてゐるのか? ちやんとリサイクルしてるのか? といふ疑問を呈する人間が出て来たのですよ。牛乳パックをリサイクルするとなると、牛乳を使ひ終はつた後、潰して、洗つて、束ねて、別の所に持つていかねばなりません。飲食店でこれをやるのは大変です。私は相当悩んだのですが、悩んでゐても仕方が無い。で、一寸だけ頑張つて色々調べると、牛乳パックのリサイクルがちつとも機能してゐない、といふ事実が明らかになりました。んで、その事を説明して事なきを得た、といふ事があつたのです。だから思ひ出深いんですねー。今は、周りでも牛乳パックのリサイクルをやつてゐる人間は居ません。やー、正しい認識が広がつてよかつた、などと思つてゐたら、豈図らんや。今度はペットボトルですか。ものが変はつただけで、構図は一緒やん!!!

 また、本書にはスーパーのレジ袋の話も載つてゐます。最近、スーパーのレジ袋がやり玉にあげられ、代はりに“マイバッグ”“エコバッグ”を持たう! みたいな運動がありますよね。うん。でも、スーパーのレジ袋は、もともと石油カスから作つてゐるのです。もう使ひやうがなくて後は捨てるだけ、といふものから作つてゐるので、実はスーパーのレジ袋自体が優れたリサイクル製品だつた訳です(ペットボトルの様なインチキリサイクル品ではありません)。それを追放し、代はりに“マイバッグ”“エコバッグ”を作つて買はせる、なんて…。資源の無駄遣ひだらう! ゴミも増える。つまり環境汚染がすすむのです。

 実はこれも、似た様な運動があつたんですねー、その昔。さう、割り箸、です。割り箸が森林を破壊する! とか誰かが言ひ出して、みんな“マイ箸”を持ち歩かう! みたいな運動があつたのです。割り箸も、本来は材木の残り、もう使ひやうのない部分を使つて作るんですね。それを追放し、“マイ箸”用に新たに木を伐採する…といふ愚かな事をやつてゐた時代があつたのです。これもね、さすがに嘲笑されて、今や“マイ箸”を持ち歩いてゐる人は居ないと思ふのですが、今度はレジ袋かよ! て、感じです。全然、進歩してない。全く、トホホ、ッて感じです。

 そんなこんなで、たとへこの本がメッチャ売れて、みんながペットボトルのリサイクルやレジ袋の追放のバカらしさに気がつき、それらが止んだとしても、またしばらくしたら形を変へて似た様な愚行が流行るんだらうなー、と虚しい気持ちになつてしまつたのです。

 とはいへ、だからと言つて、「どうせなにやつても無駄さー」などとニヒルを気取るのは最悪です。無駄かも? と思ひながらも、自分の正しいと思ふ事をやり続けるのが“生きる"といふ事でせう。

 てな訳で、こんな日記を書いてみましたー。みなさん、“エコ”や“ロハス”には要注意ですよん。

Comments

投稿者 @わ : 2007年07月23日 12:59

今でも、マイ割り箸は根付いているようですよ。

ギャルたでが環境問題のデモ行進を行ったときに、
「マイ割り箸を使おう!」と声を上げていたそうです。
http://www.sankei.co.jp/seikatsu/shoku/070514/shk070514000.htm

割り箸の原材料は間伐材で、
森林の育成に必用な作業なのですが、
有効な間伐の機会も失われてしまいました。

日本の割り箸業界が致命的なダメージを受け、
中国からの輸入に頼ることになったのですが、

現在中国では木材の輸出規制が検討され始めている(もう始まった?)とかいうことで、割り箸が足りないニュースもあったような気がします。

投稿者 酔仙亭 : 2007年07月23日 17:51

 環境関連の著作は読んでいないのですが、ある意味、日本のリバタリアンの嚆矢(でもないのかしらん)、池田清彦氏は、環境問題について何冊か本を書いているようです。
 
 生ゴミは焼却するのに相応のエネルギーが必要なので、ペットボトルと一緒に焼却した方がよっぽど省エネなのだそうですね。
 
 歌舞伎の話、楽しく読ませていただいております。
 私自身は、スーパー歌舞伎をたまに見に行く程度ですし、お能や文楽も、ごくたまに行く程度です。
 ただ、クラシックのコンサートは月に数回行きますが、同じ演目を、いろんなプレイヤー(指揮者・オケ)が、とっかえひっかえ演るということで、共通しているところが多々あるように思ったりしています。

 現職になり、出張がほとんどないのですが、京都に行くことがありましたら、是非、店に行ってみたいと思っています。

投稿者 店主 : 2007年07月30日 19:15

@わさん、酔仙亭さん、こんにちはー。
わー、お返事が遅くなつて申し訳ありませんでしたー。実は、諸事情がありまして、ここ一週間ほどパソコンが使へなかつたのです(日記は、管理人さんの所に溜めてありました)。その諸事情とは・・・、いずれ日記で明かされるでせう。

>@わさん
なんと!未だにマイ箸ブームが健在であつたとは!・・・うーむ、世の中は恐ろしいです。自分の未熟さを痛感させられます。

>酔仙亭さん
おお、池田清彦さん。私もその昔、読みました。他にも槌田敦さん、とか。昔からこの問題に警鐘を発してゐる人たちは居るんですけどねぇ。
あ、歌舞伎の日記、お読みいただきありがたうございます。なんか、私が勝手に盛り上がつて、さぞみんなはシラケてるんだらうなー、と、少々心配ではあつたのです。
クラシックのコンサートですか。私は、生まれてから数回しか行つた事がありません。しかも、そのほとんどの時間を寝てゐた様な・・・。情けないです。ただ、私は年に数回ほどソウルのコンサートに行きますが、彼・彼女らソウルシンガーも、同じ曲(過去の名曲)を自分なりにカバーするのがコンサートの売りだつたりします。さういつた所で共通するところが多々ある様に思つたり・・・する訳ないか。
歌舞伎、面白いですよー。
てか、是非オパールにお越し下さい。お待ちしてをります〜。

投稿者 baba : 2007年08月06日 20:18

田中宇さんも、以前より地球温暖化問題に懐疑的であります。ご参考までに。

地球温暖化問題の歪曲
http://tanakanews.com/f0827warming.htm

欧米中心の世界は終わる?
http://tanakanews.com/f0906multipolar.htm

地球温暖化のエセ科学
http://tanakanews.com/070220warming.htm

地球温暖化の国際政治学
http://tanakanews.com/070227warming.htm

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