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2006年08月31日(Thu)

いはゆる落日燃ゆ 読書・文学, 憂国

 小林よしのり著『いわゆるA級戦犯』を読む。東京裁判が如何にデタラメで、実はあれは裁判でも何もなかつた、といふ事。A級戦犯といふ言葉が如何にデタラメで、実はあの人たちは戦犯でも何もなかつた、といふ事。などが分かりやすく描かれてゐた。

いわゆるA級戦犯—ゴー宣SPECIAL
小林 よしのり
幻冬舎 (2006/06)

 私の様に、若い時から右翼とか保守反動とか罵られてきた人間にとつては、ほとんど既知の事実が大半で、さういつた意味では新鮮味はなかつた。しかし、周りでこれを読んだ人々から、「知らない事ばかり!」「東京裁判があんなにムチャクチャだつたなんて…」などと言ふ意見を結構聞かされたので、うーむ、やはりアメリカの洗脳は強力だつたんだなー、とか、小林よしのりの脱洗脳力はもの凄いなー、と感嘆したのでした。

 個人的に一番面白かつたのは、広田弘毅の話。広田弘毅と言へば、A級戦犯として処刑された7人の中での唯一の文官。しかも平和主義者として内外に名の知られた人であつたので、最も分かりやすく同情されてきた人である。城山三郎が『落日燃ゆ』といふ小説で広田弘毅の生涯を描き、それによつて広く知られてきた。私も『落日燃ゆ』を読んで、広田弘毅に対するイメージを作つた人間である。で、『落日燃ゆ』は勿論、広田弘毅を肯定的に描いてゐるのだけれど、実を言ふと私はこの小説を読んで、あまりいい印象を広田弘毅に持つ事ができなかつたのだ。それは“自ら計らはず”といふ悟つた様な態度、“名を捨て実をとる”といふ政策の進め方、などが、その一つ一つは納得できるものの、複合された時にどうも良くないのではないか? といふ疑問が拭ひきれなかつた事。も大きいのだが、何より処刑される時の態度が全く気に食はなかつたからである。処刑される時、他の人たちはみんな「天皇陛下万歳」を叫んで死んでいつたのに、広田弘毅は他の人たちの「バンザイ」を「マンザイ」をやつてゐると言ひ、自分一人だけ「万歳」に加はらなかつた、といふではないか! なんと言ふ心のねじけた奴! 私はかういつた人間が大嫌いなんだ! …と、広田弘毅は私の中では“ダメな奴”のレッテルが貼られてゐたのである。

 ところが、小林よしのりによると、このエピソードは城山三郎の完全な創作であつて、唯一のキチンとした資料と言はれてゐる『平和の発見』花山信勝著によると、広田弘毅もみんなと一緒に「天皇陛下万歳」を絶唱した様なのだ。さ、さうだつたのかー!!!

 いや、もちろん小林よしのりが100%正しいとは限らず、自分なりに調べてみるまでは何とも言へないけれど、少なくとも私はあのエピソードがフィクションだとは毛程も思つてゐなかつたので(だつて、あれ、結構有名なエピソードでせう? 他のところでも読んだ事があつたし)、それだけでも勉強になつた。広田弘毅に関して、考へ直してみなければ。

 にしても、小林よしのりの活躍振りにはホント頭が下がります。

Comments

投稿者 carcinogenicity : 2006年10月17日 00:39


http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn0506/sin_k236.html
よかったらこれを読んだ感想も書いてください。

投稿者 店主 : 2006年10月17日 03:13

これはこれは、どうも本の紹介をありがたうございます。

「BC級戦犯裁判」ですか。うわー、重さうな話題ですね。・・・はい、分かりました。そのうち機会があれば(古本屋で安くで見つけるとか)、読んでみたいと思ひます。すぐに、ぢやなくてスイマセン。いまだ、不健康生活ゴーイングオン!で、音楽ばかり聴いて、本から離れてをります・・・。

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