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2006年08月13日(Sun)

手をつなぐ子等 映画

 京都文化博物館で『手をつなぐ子等』稲垣浩監督(昭和23)を観る。これは戦前から京都滋野小学校で特殊学級を担当してをり、知的障害児教育のパイオニアとして知られる田村一二の同名小説が原作で、それを読んで感動した伊丹万作が、自ら監督すべく脚本を書いたものの、肺結核で逝去。結局、盟友であつた稲垣浩が追悼の意を込めて撮り上げたといふ、映画史的にも重要な作品である。

 しかし、まァ、そんな事より何よりも、とにかく素晴らしい!! 映画の冒頭、子供たちが校庭で体操をしてゐるシーンから、もう圧倒的な映画的快楽が押し寄せる。確かに、この時期の日本映画は世界一な訳だけれど、さうはいふもののここまで圧倒的に素晴らしいと、一体今の映画と何が違ふのであらうか? と、首を捻つてしまふ。

 たとへばこの映画では、子供たちの心理変化、理念、場面の流れ、などを、かなりの割合で台詞で説明してをり、普通こんなのはダメとされる(映画は映像で語らなければならない!)はずなのだけれど、別に気にならない。また、先生役の笠智衆が酷い大根役者振りなのだが、ま、笠智衆だからといふのもあるが、これも気にならない。ストーリーだつて、今から見れば牧歌的・楽天的に過ぎる様な気もするのだが、ほとんど感動的である。宮川一夫の繰り出すとてつもなく美しい映像の繋がりの中から、純な心情が流れ出す。ハッキリ言つてこんなのを観てしまふと、今の新作映画を観る気が失せてしまひます。(ッて、これは半ば、最近映画を観てない事の言ひ訳です)

 しかし、ババさんの言ふ様に「時代といふ事も勿論ありますが、やはり監督以下スタッフの方々が素晴らしいんでせう。こんなの、凡庸な監督が撮れば、観てられないですよ」といふのが正鵠を射てゐるだらう。伊丹万作脚本・稲垣浩監督のコンビでは、『無法松の一生』といふ傑作も撮つてゐるしなァ。…といふ訳で、来月の山中貞雄特集も観にいくぞ!

Comments

投稿者 秋津 : 2006年08月25日 17:36

初めまして。
いい映画観てますね。
昔の日本映画はほんとうに名作、佳作が多いような気がします。
この月末には、去年見逃した成瀬巳喜男さんの佳作や、溝口さんの名作『山椒太夫』やが、NHK/BSであるので、楽しみです。

投稿者 店主 : 2006年08月25日 19:06

秋津さん こんにちは!

ホント昔の日本映画は素晴らしいものが多いですね。成瀬巳喜男では、その昔「浮雲」を観てブッ飛んだ覚えがあります。凄過ぎる。
「秋津温泉」はまだ未見なので、是非観たいと思つてます(ッて、関係ないですか)。

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