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2005年12月23日(Fri)

句集『JAPAN』 俳句

 角川春樹の最新句集『JAPAN』を読む。前作『海鼠の日』は、獄中にて詠まれた句集であり、山本健吉文学賞を獲つたのもむべなるかな、といふ高濃度で重力感のある作品集であつたが、今回の『JAPAN』はなんといふか、かんといふか。はッちやけてゐるといふか、突き抜けてゐるといふか。とにかく無類に面白い句集であつた。句集がこんなに面白くてよいのだらうか。

 まづ、表紙からしていい。和服で日本刀を担いだ角川春樹の後ろ姿の写真の上に、真ッ赤な文字で「JAPAN」。いやでもラッパーの般若を想起せざるを得ない。またこの句集は、先頃亡くなつた母堂に捧げるとともに、義兄弟の契りを交はした長渕剛にも同時に捧げられてゐるのだが、長渕剛と言へば、般若。般若→長渕剛→角川春樹→般若、と、見事な円環を描いてゐる。知つてか知らずか分からないが、日本語ラップの最前線と斬り結んでしまつてゐるといふ、このアクチュアリティ! 

 アクチュアリティと言へば、現在まさに角川春樹制作による映画『男たちの大和/YAMATO』が絶賛公開中である。何年振りかの角川映画の復活、我々の世代の人間は、様々な感慨を催さずにはゐられない。私はまだこの映画を観てゐないのだが、たとへばこの句集の中に『戦艦大和』といふ章があり、その中の一句「麦の秋北京原人失踪す」などを読むと、ニヤリとしてしまふ。勿論、『男たちの大和/YAMATO』の監督が、佐藤純彌だと知つてゐるからであるが、たとへ知らなくても、この句から喚起されるイメージには、ニヤリとさせられる人が多いのではないか。角川春樹の句のイメージ喚起力は凄い。「原爆の日の青空に傷もなし」「万緑や脳の中まで濡れてをる」などの堂々たる作品から、「浅草を用なく歩くところてん」のやうなユーモラスなもの、「『君が代』をラップで唄ひ寺山忌」のやうな首を傾げざるを得ないやうなものまで、実に力強いイメージ喚起力に満ちてゐる。これは一寸凄いなァ。といふか、最近のそこらの小説を読むより、何倍も楽しめる。俳句チェンバーズの一員として、是非とも皆さんにオススメしたい句集。オススメ!

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