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2005年10月02日(Sun)

ロハス LOHAS

 最近、雑誌や街などで急激に目につくやうになつてきた言葉に「ロハス」といふのがある。「ロハスな生活」などといふ使はれ方をしてゐるもので、如何にも「セレブ」に続いて流行語にしやうといふ意図が見え透いてゐてイヤーな気持ちがしてゐるのだけれど、この言葉はどういふ意味かといふと、98年にアメリカの社会学者ポール・レイと心理学者シェリー・アンダーソンが提唱した概念で、“Lifestyles Of HealthAnd Sustainability”(健康と環境の持続を志向する生活)の頭文字をとつたもの。雑誌「エル」流に言へば、“心と体、地球にやさしいライフスタイル”といふ事らしい。要するに、オーガニックフードを食べ、ヨガなどで身体を鍛へ、アロマテラピーをしたり、様々なものをリサイクルしたり…といふ「明るくポジティブで洗練された都会人のためのエコ・コンシャスな生き方」を表す言葉なのだ。

 さういへば、最近やたら「オーガニック」とか「ヨガ」「整体」「フィットネス」とか、「アロマ」だとかいつた言葉が目につくなー、と思つた諸兄もゐると思はれますが、さういつたものをまとめて「ロハス」といふなんだかお洒落な概念にし、オーガニック商品、フィットネス商品、環境商品、などを売りまくらう! といふ業界側が仕掛けた言葉なのである! 

 いや、別にこれは私の邪推ではないですよ。実際に「ロハス」な人々も、自分達はこれまでの「エコ」な人々とは違つて、「豊かさのなかから自分のスタイルに合った商品を選べばよいという気軽さ」がある、と自負してゐるくらゐだ。私たちは消費社会を肯定します、と。日本ではロハスの第一人者! と言はれてゐるらしい坂本龍一も、自分の身体の気持ちよさが全ての基準、自分の身体にとつて気持ちのよい事をすればそれが結局環境にもよい事になる、と主張してゐる。雑誌「ソトコト」の人も、オーガニックフードを食べるのが基本だけど、近くにそれらがない時はファーストフードでもオッケー、だつてオーガニックフードを探してあたふたするのはストレスでせう、ストレスはよくない、だからさういふ時はファーストフードでもいいんだよ、なんて事を言つてゐる。要するに、それは…「エコ」ぢやなくて「エゴ」なんぢやないのか。自分にとつて気持ちのよい事をすれば、それが環境にも社会にもよい事につながる、なんて都合のよい事を、「売る」側がよくいけシャーシャーと言ふよなァ。と呆れます。確かに環境に配慮したライフスタイルは大切だし、それを無理なく現代生活にフィットさせようといふ考へ方も分かるけれど、どうにも「ロハス」のイメージは歪んでゐる。実際、セレブの間で人気の「ロハス」、みたいな売り込み方だし、なんかモデルみたいな金持ちさうな女性が、自動車(現代最大の環境破壊装置・殺人マシーン)を飛ばしてお洒落なオーガニックフード店に買ひ物にいく、みたいな紹介が目につく。どうにも気持ち悪いなー。

 いや、さ、こんなのは所詮商売用の言葉だし、無視すればいい、といふ意見もわかる。いつそのこと乗つてしまへば、勝ち組になれる、かも、しれない。といふ意見もわかる。最近は私も「フィットネス」な訳だし、「アロマ」「オーガニック」はオパールでも扱つてゐるし。が、ダメなんだなァ。「京都系」とか「セレブ」とか、ああいつた業界臭がプンプンする軽薄な言葉ッて、私は生理的にダメなんだ。気分が悪くなる。動悸が上がつて、吐き気がして、頭痛がする。「なめとんのか!」とブツブツと呟いた後、軽い鬱状態になつたりする。これは、身体に悪い。私も自分の身体に気持ちのよい事をするために、まづは「ロハス」を撃破するかな、などと考へたりして。

 さういへば、「ロハス」といふ言葉は、「ロハにする」といふ言葉を連想させる。何をロハにするかといふと、それは、多分、勝ち組の負け組に対する義務感だらう。勝ち組のあらゆる行為を免責する響きが感じられるのだ。しかし、この義務感がなくなつた世界は暗黒である。やはり、ロハス撃破・草莽崛起、かな。

Comments

投稿者 stickleback15 : 2006年05月08日 01:21

初めまして.私もロハスという言葉があまり好きではありません.そのことに関する記事を書いている最中にこちらを見つけました.心の中で拍手喝采しながら読ませていただきました.こちらのように味のある素敵な文章ではありませんが記事を書きまして,その中でトラックバックによって記事の一部を引用させていただきました.不適切でしたら削除をお願い致します.

投稿者 店主 : 2006年05月08日 19:52

stickleback15さん、こんにちは。
記事読ませて貰ひました。いやはや、なかなか痛快に書いてをられるではないですか。世の趨勢に抗して何か言ふのは大変な事ですが、大切な事でもあります。私の文章なんざいくらでも使つて貰つて結構です。頑張つて下さい。
また京都に来た折りなどは、是非オパールにもお立ち寄り下さいませ。お待ちしてをります。

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