京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

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 Diary 2005年1月6日(Thu.)

店の流行らせ方

 某ビルの、某食堂街に行つた。そこでは、流行つてゐる店と、さうでない店が、ハッキリと分かれてゐた。一方の店はほぼ満席状態なのに、他の店はガラガラである。私は悩んだ末、流行つてゐる方の店に入つた。運良くカウンター席が、空いてゐたのだ。そして、なぜこのやうな差が生じるのかと、酒を飲みながら考へてみた。自分の商売にとつて、なにかプラスになるかもしれない。

 まづ、なぜ私はこの店を選んだのだらうか。それは、お客さんがたくさんゐて、入りやすさうであつたからだ。つまり、店を流行らすには、まづお客さんをたくさん入れなければならない、といふ結論が出てくる。しかし、流行つてゐない店にはそもそもお客さんはゐないのだから、これはなかなか難しい。そこで私は名案を思ひついた。スタッフを大量に雇ふのだ。そしてお客さんがゐないうちは、スタッフがお客さんになりすます。その様をみて、釣られてお客さんが入つてくれば、スタッフはたちまち本来の仕事に戻る、といふ訳だ。もちろん、スタッフが飲み食ひした分は、給料から引く。これなら、大繁盛間違ひなしだらう。問題は、そのやうなスタッフが集まるかどうか、だが、今は不況で職もないから、大丈夫だらう。みんな、お金を払つてでも、働きたいと思つてゐるはずだ。ニート、といふ働く意志のない若者の問題がある、と言はれるかもしれない。しかし、それも問題はない。ニートの若者も、積極的に雇ふ。むろん、彼らはズーッとサクラをやつて飲み食ひしてゐて貰ふ。飲み食ひ代は、彼らの親から貰ふ。これなら彼らもやりたがるだらうし、ニートとして子供を遊ばせておく余裕のある家庭なら、喜んで大金を払ふだらう。やつと自分の子供が働く気になつたのだから。我ながら素晴らしい名案に、私は気分がよくなつて、ワインのボトルを注文した。

 さらに考へてみる。なぜ私はこの店を選んだのか。実を言ふと、私はこの店(オシャレ系居酒屋)と中華料理屋のふたつで悩んでゐたのだ。その中華料理屋は、おいしいと言つて評判のところであつた。多分、この店よりもおいしいのだらう。しかし、私はこの店を選んだ。理由は、この店の方が流行つてゐて入りやすさうだつたから。それと、私は和食が食べたかつたからだ。ここで導かれる結論は、店はお客さんのニーズにこたへなければならない、といふ事だ。もし、この中華料理屋に和食があれば、私は中華料理屋の方に行つたかもしれないのだ。これからは店も、幅広く柔軟に、お客さんのニーズにこたへていかなければならない。オパールも、カフェだからと言つて、コーヒーやケーキばかり出してゐてはいけない。寿司を求められれば寿司を、モンゴル料理を求められればモンゴル料理を提供し、カンフーを求められればカンフーを指導し、卓球を求められれば卓球の相手をしなければならない。ううむ、商売をして生き残つていくのは大変だ。私はスッカリ暗い気分になつて、酔ひ潰れ、気がつけば店の外に放り出されてゐた。

 冬の夜空に、星が綺麗であつた。

小川顕太郎 Original: 2005-Jan-9;