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 Diary 2005年2月20日(Sun.)

本屋

 オイシン来店。「大垣(市)には本屋がないんですよ! だからかうやつて京都にやつて来た時に、ついつい買ひ込んでしまふんです」と、本屋の袋を見せながら言ふ。

 あれ? 大垣書店ないの? ほら、オイシンが京都にゐた時によく通つてゐた。

「ないんです! 大垣には大垣書店はないんです! 大垣書店は京都にあるんです。」

 ふーん、変なの。町村合併でもしたの? 飛び地の。

「する訳ないでせう。実際に岐阜では飛び地の町村合併とかやつてゐるんですから、さういふの洒落になりませんよ。やめて下さい。」

 うむ。で、ホントに本屋がないの?

「ほとんどないですねー。たまにクルマに乗つて探すんですが、あ! 本屋の看板が! と思つて近くまで寄つていくと、まづないんです。」

 なにそれ。大垣の本屋は逃げ水みたいなものなのか?

「んな訳ないでせう! 潰れてゐるんですよ。看板だけ残つてゐるんです。」

 オイシン、それ確かめたのか。

「別に。でもそんなもの確かめるまでもないですよ。明らかに他のものを商つてゐるんですから」

 オイシンがゐない間に、大垣では「本屋」の概念が変はつたのかもしれないぞ。

「変はる訳ないでせう! それに、もし変はつたとしても、ボクは本を買ひたいんだから、意味ないですよ」

 本を買ふだけなら、インターネットでいいぢやないか。

「いやー、ねー、インターネットぢや味気ないんです。やはり本屋はねー、大量の本が並んでゐて、それを自由に手にとつてみる事ができるぢやないですか。それがイイ! ボクはさういふのを求めてゐるんです」

 なるほど、万引きする訳だな。

「違ひますよ!! 人を篠原*子みたいに! もう、店主、さつきから下らない事ばかり言つて。いい加減にして下さい!」

 単なる冗談ぢやないか。シャレ、シャレ。

「わざわざ京都まで出てきて、そんなショーモナイ冗談なんか聞きたくありません!」

 ……オイシン、田舎に引つ込んで、都会のエスプリが失はれたんぢやないか?

「都会のエスプリなんて、ボクは最初から持つてゐません!」

 お、田舎に引つ込んで素直になつたな。正確な自己認識だ。偉い、偉い。

「それ、褒めてゐるんですか、貶してゐるんですか!」

 私がオイシンを褒める訳ないだらう。

「う、さうですね…」

 やはり、田舎に引つ込んで鈍くなつたな、オイシン。もつと京都に出てきてオパールに来ないと、一年後にはとんでもない事になつてゐるぞ。

「ま、毎週来てゐるぢやないですか。結構大変なんですよ、これでも」

 うむ、分かつてる。アホやなァ、とみんなで呆れてゐる。

「…………」

 オイシンは来週も来るのだらうか。

小川顕太郎 Original: 2005-Feb-20;