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 Diary 2005年2月17日(Thu.)

きみに読む物語

公式サイト: http://www.kimiyomu.jp/

 MOVIXにて『きみに読む物語』(ニック・カサヴェテス監督)を観る。この映画は、ニック・カサヴェテスが母親のジーナ・ローランズを主役(のひとり)に据ゑて撮つた、といふだけで話題性抜群の作品である。共にジーナ・ローランズのファンである私とトモコは、純愛うんぬんなどといふ事とは全く関係なしに、一緒にこの映画を観に行つたのであつた。で、トモコはどうだつた、この映画?

「それは、もう、ジーナ・ローランズの足が凄く綺麗だつたのが衝撃! 普通は年をとれば足も衰へるものだけど、とても綺麗なの。さすが、と感動したわ。またそれを息子がチャント分かつてキレイに撮つてゐるでせう。お婆さんなのにあんな膝丈のタイトスカートはかせて、足のキレイさを強調してゐる。そこが、一番良かつたわよね」

 確かに、ジーナ・ローランズは最高だつたね。ジーナ・ローランズと言へば『こはれゆく女』の精神を病んだ女性の役が思ひ浮かぶけど、今回は老人ボケの役。キチガイやボケをやらせて、ここまで素晴らしい人はさうさうゐないよね。

「品があるのよ。キチガイでもボケでも。そこが、凄いの」

 なるほど。でも、まァ、映画そのものは一寸シュガーコーティングがきつすぎて、まァまァ、てな所かな。あんまりにも都合の良いファンタジーだし。親父(ジョン・カサヴェテス)の厳しさは息子にはない、といふ事か。

「さうねェ、『ジョンQ』とかでもさうだつたけど、御都合主義が息子の得意技なのよ」

 あそこもねェ…イヤ、ここからはネタばれになるから、未見の人は読まない方がイイと思ふんだけど。

「さうね、観てから読む、あるいは永遠に読まない、といふ事で」

 うむ、で、ま、その、アニーがさァ、婚約者を捨てて主人公を選ぶ、といふのも、チョイ無理があると思ふんだなァ、やつぱ。ま、映画的にはさういふ展開があつてもイイとは思ふんだけど、それには少し、リアリティに欠ける、といふか。

「あら、さう。でも、あの選択は、考へやうによつては凄く理に適つてゐると思ふわよ」

 あ、さう? どういふ風に?

「主人公のノアはね、確かに無知・無教養で甲斐性もなし、自分といふものを持たない人間よ。でも、映画の冒頭で彼自身も言つてゐたけど、そこがかへつて彼の強みでもあるの。つまりアニーに尽くして尽くして、尽くしまくれるの。多分、結婚後も、少しでもアニーに贅沢をさせてやらうと、自分の生活がないくらゐに身を粉にして働いただらうし、年をとつてアニーがサッサと呆けてしまへば、あのやうに献身的に尽くす。こんな奴隷のやうなこと、ノアが無知・無教養で自分がないからこそ出来るのよ。あの婚約者ならさうはいかないわ。頭が良くて教養もあつて何でもできる、しつかり自分の考へもある、お金もある。こんな人はそんな奴隷のやうな人生は送られない。でも、女の子はねェ、かういつた奴隷…と言つて言葉が悪ければ騎士(ナイト)でもいいけど、が欲しいものなのよ。徹底して尽くしまくられる、女王様として崇められる、といふのに憧れるところがある訳。だから、アニーがさういふ人生を望んだのなら、あの選択は正しかつたのよ」

 うーむ、なるほど、さうだつたのか。ぢやあ、この映画に感情移入する女性ッて……。

「それはともかく、なにより絵(画面)がキレイだつたし、お母さんをあれだけキレイに撮つたといふだけで、この映画はオッケーでせう」

 まあね、最後の、といふか、終演後のケミ**リーさへなければね。

「**スト*−くたばれ!!!」

 といふか、こんなバカなオマケをつける事を考へた人にくたばつてほしい。

小川顕太郎 Original: 2005-Feb-20;