京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

Home > Diary > 04 > 0917
 Diary 2004・9月17日(Fri.)

胡桃

 アキラ 28000 来店。金沢銘菓「くるみ」といふ和菓子をくれる。「くるみが嫌いなもので…」とアキラ 28000 が言ふので、てつきり味の事を言つてゐると思つた私は、でも見た目は可愛くてイイよね、と言へば、「え! さうなんですか?」と驚かれてしまつた。アキラ 28000 は、くるみの味も形も、その存在自体が嫌いであり、この世に「くるみ」の好きな人間がゐることが信じられないさうだ。

 私は、味はともかく、「くるみ」の存在は好きである。胡桃、といふ漢字も好きである。そして何より、この私の胡桃好みには、澁澤龍彦の名著『胡桃の中の世界』の影響が大きいと思ふ。胡桃を見ると、といふか、胡桃の存在を思ひ浮かべると、私は反射的にそこに壺中天を想ふし、「無限」といふ観念を思ひ浮かべる。胡桃の中に我々が住んでゐるのと同じ全世界が詰まつてゐると考へ、その世界の中にも当然私がゐて胡桃を手に持ち、その中に詰まつてゐる全世界を想つてゐる。その世界の中にも胡桃を手に持つた私がゐて…、といつた具合である。このやうな無限やミクロコスモスに関する嗜好は、幼い頃には誰にでもあるものだとは思ふし、私にも勿論あつたが、それを確固たるものにしてくれたのは、やはり澁澤のおかげだらう。と、いつた訳で、私は胡桃が好きなのです。

 ちなみに、銘菓「くるみ」は、なかなかおいしかつたです。

小川顕太郎 Original: 2004-Sep-19;
Amazon.co.jp
関連商品を探す
「胡桃の中の世界」