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 Diary 2004・10月31日(Sun.)

電話加入権

 ババさん来店。「電話加入権」の廃止について、話す。「電話加入権」とは、電話線をひく権利のことで、これがなければ電話線を使ふ事ができない。大抵の人は、実家を出て一人暮らしを始める時に直面する問題で、いくら電話のついてゐる部屋に引ッ越したとしても、この「電話加入権」がなければ電話を使ふ事ができないのだ。で、買ふことになるのだが、確か 7 万円くらゐしたはずだ。高い。インフラがほぼ完璧に整つた現代においても、このやうな高いお金を取り続けるのはムチャクチャだと前から思つてゐたのだが、この度この「電話加入権」を廃止する事になつたのださうだ。

 今の若い人たちはみな携帯電話を使つてゐて、新たに高い「電話加入権」なんて買はないこと、またインターネット産業を広げるために、そんな若い人たちにも電話線を使つて貰おう、などと言ふ理由だらうが、それはそれで良いことだらう。今まで、暴利を貪つてきたのだから。ところが問題は、廃止にともなつて、今までの「電話加入権」もチャラにする、といふ点だ。これはおかしい。何故なら「電話加入権」とは一種の「債権」であり、売買もできるし、必要なくなればいつでも NTT (電電公社)が買ひ戻す性質のものだからだ。つまり我々「電話加入権」を持つてゐる人間は、みんな 7 万円くらゐのお金を NTT に貸してゐることになる。それを、全てチャラにしやうといふのだ。これはムチャクチャな話ぢやないか? 昔は「徳政令」といふのがあつた。これは膨大な借金に苦しむ庶民を救ふために、借金をチャラにするといふもので、だから「徳政」な訳だが、今回の「電話加入権」問題は、この逆である。我々庶民が、NTT といふ半ば国営の企業に貸してゐたお金を、チャラにしやうといふのである。NTT がどんなに暴利を貪つてゐるか、みんな知つてゐるだらう。これでは「悪政令」ではないか。

「さういへば、日垣隆も、今回の電話加入権廃止問題は『国家的詐欺だ!』と言つてゐましたよ」とババさん。

 ババさんによれば、といふか日垣隆によれば、もともと電話加入権は、戦後にインフラを整へるために、国民から一時的にお金を借りる形で始まつたものだといふ。だからインフラさへ整へば、それはもう新加入者からとる必要はないし、すでに加入権を持つてゐた人々には、そのお金を返さなければならない。ところが、電電公社はすでに 1978 年に「主なインフラは整備された」と宣言したにも関はらず、その後もズウッと「電話加入権」をとり続けた。その莫大なお金は、インフラに回されるのではなく、電電公社・NTT の職員の懐に入つてゐたといふ訳である。それだけでも酷いのに、今回はその「返すべきお金」をチャラにしやうといふ。正にこれは、悪質な詐欺、以外のなにものでもない。

 少年犯罪事件を起こした少年たちの両親には、「うちの子は悪くない」「被害者にも落ち度があつたはずだ」「社会が悪い」「学校が悪い」と、居直る人が非常に多いといふ。かういふ親の下で育つから、反省を知らず、年長者のいふ事をきかない、犯罪事件を起こす子供になる、ともいへるだらう。とすれば、国家的詐欺を繰り返してゐるやうな国の国民は、詐欺をして恥じることのない破廉恥漢に育つ、といふ可能性が大である。まさに亡国的だ。

 戦後、真ッ当な愛国心を育てることに失敗し続けてきたツケが、ここに来てドワーッと出てゐるのではないか。などと考へながら、10 月は終はつていく。

小川顕太郎 Original: 2004-Feb-2;