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 Diary 2004・10月14日(Thu.)

御多福珈琲

 寺町通りの四条を下がつたところに、「御多福珈琲」といふ喫茶店がある。その名前といひ、ロゴマークといひ、地下に降りていくのだが、その店の佇まひといひ、如何にも数寄者がやつてゐるといふ雰囲気、それも多分、若い人間がやつてゐるだらうといふ感じがしてゐたので、前から気になつてゐる店のひとつであつた。本日たまたま前を通りかかつたので(気にしてゐるとはいへ、普段は忘れ気味)、これは好機と入つてみた。

 思つたより狭い店内は、お客さんで溢れてゐた。意図的にアンティークな、可愛らしい店内である。5 人掛けのカウンターが 2 席だけ空いてゐた。と、いふ事は、そこに座る訳だ。一寸ためらつた後、そこに座る。「はじめまして」と、伸ばしたもみあげにシックスティーズスタイルの店主らしき男の人が、にこやかに迎へてくれた。「あら、エラい綺麗なヒトがやつて来たわ」と、私の隣の席のをばさんが、トモコを見て言ふ。こ、これは、もしかして、さういふノリの店かァ! ……未だ初対面の人と話すのが苦手な私は、さてどうしやうかと、内心で頭を抱へた。

 しかし、結果として非常に楽しい一時を持つ事ができた。それは店の人も、お客さんも、とても良い人たちだつたからだ。この「御多福珈琲」は、もともと知恩院などで行はれる手作り市での屋台として出発したやうである。その独特のスタイルと魅力で、着実にファンを増やし、そのファンに支へられて、今年の 6 月にこの場所にオープン。毎日のやうに集う熱心なファンの人たちとともに、独特の磁場を形成してゐる。

 店主であるノダアツシさんは、しつかりした哲学を持つた人のやうで、自分の考へる理想・夢を実現するために日々邁進してゐる、といつたタイプ。店は彼の持つビジョンの一端を体現したものなのであり、彼自身はもつと遠くまでを射程にいれてゐる、と感じられた。珈琲に関しては師匠を持ち、本格派。酸味のきいた、私好みの味である。かういつた人はオーラを発してゐて、それが人々を惹きつけるのだ。開店して 4 ヶ月目、イケイケの勢ひを感じた。羨ましい…とは言ひません。

 カウンター内にはノダアツシさんとともに、女性の方がひとり。この人がパートナーだらう。我々が喋つてゐる間も、黙々とケーキを焼いてをられ、実は彼女こそがこの店を支へてゐるのでは、とも思つた。なんにせよバランスのとれた、理想的な二人組なのではないでせうか。すでに各所で静かに話題を呼んでゐるやうではあるが、興味のある方は是非のぞいてみてください。朝 10 時から夜の 10 時まで。まだ、知恩院の手作り市には屋台を出してゐるやうで、その日はお休み。あ、明日か。そちらを覗いてみるのも、また面白いかもしれません。

小川顕太郎 Original: 2004-Jan-16;