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 Diary 2004・10月2日(Sat.)

お通夜

 本日はお通夜。私はお通夜が終はつた頃に、葬儀会館に駆けつける。今夜は従兄弟 3 人で夜伽をするのだ。

 まづは簡単に焼香を済まして、棺の中に収められた祖父に対面。エンバーミングといふのか、きれいに整へられた祖父の死に顔は、まるで生きてゐるかのやうであつた。一瞥して、背筋にゾクッと寒いものが走る。が、それではいくらなんでも失礼であらうと、しばし見つめ続けた後、そこを離れる。

 親族控へ室には、お通夜の後にみなで行つた会食の残りもの、お寿司や煮物、揚げ物などがあり、冷蔵庫にはビールやお酒があつた。早速、3 人で飲み、かつ食べながら、祖父の生前の思ひ出話にふける。従兄弟の一人とは同じ歳であり、実家も近かつた、といふ事は、祖父の家とも近かつた訳で、割と似たやうな祖父に対する印象を持つてゐる。何よりも祖父は怖かつた、といふのが共通する印象で、お互ひ祖父に怒られた思ひ出を次々と出し合ふ。共通するものも幾らかあつて、かなりおかしい。実を言ふとここ 10 年、いや 15 年くらゐか、の祖父はかなり軟化してをり、好々爺のやうな感じになつてゐたのだが、我々も大きくなつて正月以外はあまり会はなくなつてゐた事もあり、やはりその(好々爺のやうな)祖父ではシックリこない。やはり、眼光鋭く、恐さうに顔を引き締めてゐるのが、我々にとつての祖父なのだ。だから、二人で祭壇に飾つてある遺影に文句をつけたりする。90 歳頃のものらしいが、これは、我々にとつての祖父ではない。せめて 70 歳くらゐの時のものにすれば良かつたのに、と、勝手なことを言ひ合ふ。

 夜中の 3 時過ぎに、さすがに二人が眠気を露わにしてきたので、私が後を引き受けるからと言つて、二人を寝かす。私は夜の仕事なので、平気なのだ。親族控へ室を出て、祖父の棺のそばに行き、そこで本を読みながら過ごす。祖父も本が好きな人であつた。趣味は読書と家族麻雀。質素堅実を旨としてゐた。好きな作家は、私の知るかぎりでは山本周五郎。私が中学生の時に、吉行淳之介の本をプレゼントして、怒られた事がある。今夜は海音寺潮五郎を読んで過ごした。これなら、祖父に怒られることもないであらう。ま、怒られてもいいんだけど。

 何度か祖父の顔を見る。縞模様の着物を着てゐるせゐか、胸が波打つてゐるやうに見える。ほんとに寝てゐるとしか思へない。夜の静けさが、周りを圧してゐる。祖父にソッと話しかけてみる。……

 朝方になつて、従兄弟が起きてきた。会館の人たちも、出勤してきたやうだ。私は少しだけ横になつて、仮眠をとることにする。30 分も寝られれば、良いだらう。朝の騒々しい空気が、辺りに漂ひ始めてゐる。

小川顕太郎 Original: 2004-Jan-4;