京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

Home > Diary > 04 > 0506
 Diary 2004・5月6日(THU.)

アンダーカバー・ブラザー

cover

 DVD で『アンダーカバー・ブラザー(マルコム・D ・リー監督)を観る。これは、ブラックカルチャーに侵されつつあるアメリカからブラックカルチャーを放逐しようとする謎の白人至上主義組織(ボスの名前はザ・マン)と、黒人の権利と誇りを守らうとするこれまた謎の組織「ブラザーフッド」との、裏の世界での暗闘を描いた作品である。そして、その「ブラザーフッド」の先兵として活躍するのが、特大アフロヘアーにバキバキの 70 年代ファッションで、ブラックスプロイテーション映画のヒーローを現代に甦らせたやうないでたちのアンダーカバー・ブラザーだ! 全編にゴキゲンな 70 年代ソウルが流れまくり、カルチャーギャップ・ギャグが連発される…と、まるで黒人版『オースティン・パワーズ』だが、実際、脚本は同じ人のやうである。つまり、バカバカしい。あまりにバカバカしい内容の映画なのだが、もちろん、おもしろい。あまりに面白い映画であるのだ。ある程度サブカルチャーに対する知識があり、このバカバカしさを楽しむ度量があれば。

 個人的には、アンダーカバー・ブラザーが、ブルック・シールズ似の金髪碧眼肌が真ッ白のグラマラス美人と一緒に、デレデレしながら『エボニー・アンド・アイボリー』を歌ふところなんかに悶絶した。基本はブラックカルチャーの素晴らしさを前提としながらも、かういつた黒人男性の白人美女に対するコンプレックスをギャグに仕立て上げたり、O.J. シンプソン問題をネタにしたり(ッて、またかいな!)と、自らを笑ふ視点もしつかりある。これぞ、本当にブラックカルチャーがアメリカのメインストリームにまで浸食してゐる証拠だらう。「ザ・マン」も焦る訳だ。

 それにしても、かういつたカルチャーギャップギャグとパロディーを中心にした映画といふものは、どうしたつてマニア向けといふ意識があるのか、なかなか日本ではちやんと公開されない。確かこの映画も、去年東京で公開されて、大阪までは来たものの、京都には来なかつた。大阪でも、ほんの形ばかりの公開で、とても観に行けるやうなものではなかつたし。とはいへ、ほぼ同内容の『オースティン・パワーズ』が 3 作とも公開されたのだから、ここに日本におけるブラックカルチャーに対する偏見を感じる。はつきり言つて、『アンダーカバー・ブラザー』より『オースティン・パワーズ』の方が分かりやすい、といふ事はない。と思ふ。『オースティン・パワーズ』を見に行つた人のうちどれぐらゐの割合の人が、シックスティーズと現代のカルチャーギャップギャグや、様々な映画のパロディを分かつて観てゐたといふのか。もしかしたら、『アンダーカバー・ブラザー』の方が、分かりやすいんぢやないか。…と、まァ、文句を言つても仕方がないので、たとへ DVD といふ形であつても、日本語字幕つきで観られるのを喜びたいと思ふ。これからも、ブラックカルチャーを扱つた映画を、ジャンジャンと DVD 化してほしいものだ。とりあへず、『WASH』あたりから、どうでせうか。

小川顕太郎 Original: 2004-May-8;
Amazon.co.jp
関連商品を探す