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 Diary 2004・7月28日(WED.)

チカーノの美学

 ババさん来店。これがベッチの目指してゐる理想型ですよ、と言ひながら、私が SILENCER の CD 『From The Thugs』 を見せると、「ううううーーーーん、これは、『カッコイイ』といふ概念が限界まで試練に曝されてゐる感じですねー」と、身体を捻りながら言つた。なるほど、やはり、さうなのか。実を言へば私も、最初はさうであつた。チカーノの世界には、チカーノラップといふ音楽を通して参入したので、最初は彼らのファッションセンス、といふか美学がよく分からなかつたのだ。コレッて、凄くダサいんと違ふの? といふ格好、CD ジャケット、自転車(ローチャリ)などに頭を抱へながらも、彼らの音楽に酔いしれてゐた訳だが、ドンドン深く関はるにつれて、なんとなく彼らの美学にも慣れていき、ある時ハッと気がついたら、もうチカーノこそが今この世で最もカッコイイ連中だ、といふ確信を抱くまでになつてゐたのである。この SILENCER の CD ジャケットなんて、凄くカッコイイと思ふけどなー。ベッチが理想とするのも、よく分かる。

「これは、日本でいふところのヤンキーの美学なんですよ。どれだけカブいてゐるか、といふのがポイントで。いかつい大男が、小さなゴテゴテした三輪車みたいなもの乗つてゐる、といふのは、実際に見れば凄く悪さうで、カッコイイと思ひます。素敵。」と、トモコも横から口を出して熱弁を振ふ。ババさんは、「うーむ、さう言はれてみれば、カッコイイやうな、よくないやうな、…よく分からなくなつてきました!」と手をあげる。私が、彼らは美学のグローバリゼーションに抵抗してゐるんですよ、と適当なことを言へば、「うむ、それはさうですね」と今度は背を正した。うむ、いや、それは全くその通りなのであつた。彼らは、ブラウンプライド、と好んで言ひ、「チカーノ」といふ自らの出自・民族性を誇らしげに掲げる。これぞ、グローバリゼーションに対する抵抗なのだ。我々も、イエロープライド、と、いやこれはイマイチだから、やはり「大和魂」と、T シャツにでも大書して、ローチャリに乗りますか。

 さういへば、ハッシーは暴走族時代に「天照皇大神」と背中に大書された特攻服を着てゐたさうだが、これこそチカーノの美学に通じるもの。グローバリゼーションに対抗するものである。

 我々の闘ひは、続行中である。

小川顕太郎 Original: 2004-Jul-30;
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