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 Diary 2004・1月17日(SAT.)

考へる
オイシン

 昨年から定職を持ち、勤めを始めたオイシンであるが、勤め人暮らしの苦しさに、かなり参つてゐるやうだ。この苦しみは、ほぼ全てオイシンがオパールに来るやうになつたがために生じたものである。その理由を述べやう。

 まづオパールに通うやうになる前のオイシンは、勤め人なんてダサいぜェー、オレは横文字の自由業(具体的にはウエブデザイナー)で格好良く生きていくぜェー、といふやうな奴であつたので、もしオパールでこの「迷妄」を叩き直されることがなかつたら、今のやうに辛い勤め人生活を送ることもなかつたであらう。また、遅かれ早かれ自由業の夢破れ、勤め人生活をすることになつたとしても、仕事なんて適当に手を抜いてやればいいんやー、楽なんが一番ー、と考へて、ヘラヘラと生きていつた可能性が高い。が、オパールで「仕事をキチンとやらない奴は人間の屑」といふ「真理」を叩き込まれたので、現在のオイシンは同僚たちのやうにチンタラ仕事をやることに耐へられず、ついつい真面目に仕事をこなしてしまい、同僚たちからは浮き、上司からは気に入られる、といふ事態におちいつてゐるのだといふ。それならそれでイイぢやないか、といふ意見もあらうが、オイシンはこの状態にも納得できてゐない。といふのは、いくら仕事をちやんとやるとは言つても、仕事第一! などと思へる訳もなく、やはり映画を観たり本を読んだりといふプライベートの時間を一番と考へてしまうからだ。だから仕事人間である上司たちとも、そこまで馴染むことができないのだ。実はこのプライベートの時間うんぬんといふのも、オパールにきたせゐで起こつた考へである。なぜなら、オパールに来る前の大学時代のオイシンは、あー暇やー、何したらいいか分からんー、と、テレビでも見て時間を潰してゐるやうな奴であつたからだ。オパールに来るやうになつたがために、映画や本、音楽などの世界を知り、もつと時間が欲しい! と思ふやうになつてしまつたのだ。

 厄介なことである。上記の「迷妄」と「真理」は、もしかしたら交換可能かもしれない、といふ事が、さらに厄介である。オイシンがオパールに来たのは、悪魔の悪戯だつたのだらうか。

 しかし、人は自分の過去は変へられないし、また自分の過去を踏まへて生きていくしかない。そして、過去に「間違ひ」などといふ事はあり得ない。それらは全て、永劫回帰するのだ。さらに付け加へるなら、人は状況に強ひられてのみ、思考する。通勤電車の中で「論語」を読みながら、思はず涙ぐんでゐるオイシンは、生まれて初めての「思考の苦しみ」を味はつてゐるのかもしれない。

 1 月 17 日に、オイシンの話を聞いて記す。

小川顕太郎 Original: 2004-Jan-19;