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 Diary 2004・2月26日(THU.)

「具体」回顧展

 兵庫県立美術館に「『具体』回顧展」を観に行く。「具体(具体美術協会)」は、吉原治良を中心として 1954 年〜 1972 年まで活躍した日本の前衛芸術集団である。現代芸術にはあまり興味のない私であるが、それでも 70 年ぐらゐまでの芸術はそれなりに面白いと思つてゐて、「具体」なんかは私の好きなもののひとつである。なぜ「具体」が好きなのか?といふ事はたまに考へるのだけれど、それは「具体」が「前衛」や「実験」といふ言葉が色褪せる前の時代の運動であり、故に純粋な創造の喜びが素朴な力強さで表されてゐるからではないか、などと思つてみたりする。私が「具体」と聞いて思ひ浮かべるのは、紙を破つてゐる村上三郎の有名な写真と、泥(絵の具)の中でのたくつてゐる白髪一雄の有名な写真であるが、さういふものからは、純粋なおかしみと共に、なんだか懐かしいやうな胸が熱くなるやうなものが感じられる。また、「具体」が日本の、さらには関西、芦屋を中心に起こつた運動であるといふのも大きいと思ふ。地元であるが故に、小さい頃から「具体」の作品に接する機会も多かつたし、私の周りにも、たとへば嶋本昭三のところに出入りしてゐる知人がゐたりして、なんとなく親しみがあつたのだ。まァ、そんなこんなで、わざわざ神戸まで寝不足の頭で出掛けていつたのであつた。

 期待通り、非常に楽しい展覧会であつた。それぞれの作品が面白いのはもちろんとして、さういふものが作り上げる空間が楽しい。が、今回の展覧会で良かつたのは、映像である。グタイピナコテカ開館の時の映像や、みんなの作品制作風景、野外で行はれた「具体展」の様子、そして大阪万博の時の「具体美術まつり」の様子。「具体」はパフォーマンス的な要素も強かつたので、やはり映像がないと、と思ふ。満足してそこを出る。

 ところで、この兵庫県立美術館は昔はもつと山手に、王子公園のそばにあつたのに、海側に移転してゐた。規模はかなり大きくなつてゐたし、建物も良くなつてゐたが、少し場所が辺鄙であるのと、六甲颪がきついのが難点となつてゐた。建物を出ると、恐ろしい勢いと寒さの風が荒れ狂つてゐて、1 分と立つてゐられない。路上にゐる他の人たちもみな「ヒー!」と悲鳴をあげてゐる。タクシーを捕まへて、三宮へ。

 初めて、キタアキくんの働いてゐるバー、「Man Hole」へ行く。小さいが感じの良いバーで、モダンソウルが鳴り響いてゐる。キタアキくんのバーテンぶりもすでに堂に入つたもので、この仕事に向いてゐるんぢやないか、と思ふ。場所柄、一見さんでよく外国の人たちが来るさうなのだが、さういふ人たちとも巧みに話を合はせ、神戸のソウルシーンを紹介したりしてゐるさうだ。さすがである。私には、とても出来ない芸当だ。

 本日は凄く寒かつた。

小川顕太郎 Original: 2004-Feb-28;