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 Diary 2004・4月25日(SUN.)

赤い天使

 京都文化博物館にて映画『赤い天使』(66 年・増村保造監督)を観る。これは前々から観たい観たいと思つてゐた映画なので、遂に念願がかなつたことになる。文博では、4 月はずつと若尾文子特集をしてゐたやうで、気付いたのが三日前なので見逃した作品も多いが、この作品には間に合つて良かつた。多分、ビデオにも DVD にもなつてゐない、カルト作品。

 期待通り、凄い映画であつた。日中戦争時に大陸へと渡つた従軍看護婦を若尾文子が演じてゐるのだが、いつ死ぬか分からない極限状態、男ばかりの殺伐たる世界で女に飢ゑた兵士たちによつて、犯されたり、性的奉仕をさせられたりと、酷い目にあひ続けるのだが、それも仕方ないと思へる若尾文子の美しさ! なんといつても、血と脂と切り取られた手足がゴロゴロしてゐる前線の病院で、若尾文子(のみ)は常に完璧にお化粧をしてゐるのだから。髪型もバッチリときまつてゐるし、その反リアリズムは素晴らしい。かやうに酷い目にあひ続ける若尾文子だが、どんな目にあつても、私はこの人たちを救はねば! と、さらなる奉仕を自分から望むところなど、『ドッグヴィル』におけるニコール・キッドマンを思はせる。特に、両腕を失つた川津祐介が、腕がない事を理由に、次々と厚かましい要求を突きつけていき、それに若尾文子が応へていくところは圧巻で、あのシーンによつて川津祐介は若尾文子ファンから激しい嫉妬と憎しみを買つたのは間違ひないだらう。「ボクは汚い人間です!」とか叫ばれてもねェ…。

 とにかく、看護婦姿のまま銃を撃つところとか、冗談で軍服を着るところとか、格好いい若尾文子の姿も満載で、ファンには大満足の一本だらう。実際、文博のホールは、いささか年老いた若尾文子ファンでいつぱいであつた。

 ホールを出たところに、昔の若尾文子の主演映画のポスターが何枚か展示してあり、どれもこれも欲しい! と思はせる素晴らしいものだつたのだが(『温泉女医』のポスターが一番欲しかつたかな)、その中に『赤い天使』のものもあり、そこに「天使か! 娼婦か!…」といふ文句で始まる扇情的な宣伝文句が書いてあつて、さういふ映画と違ふやん、と思ひつつも、あきらかにさういふ風に売られ、受容されてゐたんだらうなァ、と感じ入つた。

 また、若尾文子特集を、是非やつてほしいです。

小川顕太郎 Original: 2004-Apr-27;