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 Diary 2003・10月4日(SAT.)

誤字

 テラダさん御一行来店。と、同時に「オガワくん、先生ダダ怒りやで」とテラダさんが嬉しさうに言ふ。ダダ怒り? それは凄ーく怒つてゐる、といふ意味だらうか。それにしても、何か拙かつたかな。今日から畦石舎展で、もちろん出品作品について言はれてゐるのだらうが…。

「誤字や誤字。オガワくん、字、間違つてゐるやん」

 ガーン! …さうだつたのか。あの字、間違ひだつたのか。…少し、詳しく説明しておかう。今回、私は「憂国」の 2 文字を書いた。これは、三島由紀夫の「憂国」と書かれた色紙(むろんコピー)を手に入れたことに始まる。三島の字は、優美とも軟弱ともとれる字であり、今の私の目から見れば、あまりシックリこないものがある。故に自分なら「憂国」の 2 文字をどう書くか、と考へた。そして様々な古蹟を見ながら考へを巡らしてゐたのだが、その時に、富岡鉄斎の「師母三千子嫗之碑碑陰拓本」(明治一五年)といふものに目が止まつた。そこにある「憂国(家)」の二文字、これはイイ! と思つたのだ。特に、「憂」の字の上の部分が「百」になつてゐる所がイイ。これは刻字だが、これをサンプリングしてしまへ、私の書はヒップホップなのだから、と、まァ、調子に乗つて書いたはいいものの、そもそもこの鉄斎の「憂」の字が誤字だといふのだ!

「鉄斎は誤字が多いから気をつけなアカンのや。その他にも池大雅とか、有名人もよく誤字を書いてゐる。また誤字ぢやなくても、当時は正しいとされてゐたのが、今では間違ひと判明してゐることもある。篆書の場合とかやな。呉昌碩でも、その手の間違ひはあるで。なんにせよ、勉強不足やな。」

 さうか…。書や篆刻の世界つて、ややこしいなァ、もう。

 このやうな訳で、散々テラダさんにいぢめられる。参りました。誤字には気をつけませう。

小川顕太郎 Original:2003-Oct-6;