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 Diary 2003・5月22日(THU.)

原作『魔界転生』

 あんまり平山版・映画『魔界転生』が下らなかつたので、気持ち悪くなり、10 年以上ぶりに原作である小説『魔界転生』(山田風太郎著)を本棚から取り出し、パラパラと目を通してみる。

 私は、山田風太郎の忍法帖シリーズの熱狂的ファン、といふ訳ではない。山田風太郎なら、初期のミステリーや明治モノの方が、多分好きだらう。とはいへ、忍法帖シリーズが無類に面白いことに異存があるわけではない。ただ、忍法帖シリーズには、本当に熱狂的なファンがゐるやうなので、私程度でファンを名乗るのは気が引けるのだ。せいぜい、15、6 冊しか忍法帖シリーズを読んでゐない、私程度の人間では。

 で、そのやうな私の私的な感想だが、『魔界転生』は忍法帖シリーズの中では、まあ、中の上、といつた出来のやうに記憶してゐた。同じ柳生十兵衛シリーズなら、『柳生忍法帖』の方が面白かつたやうな気がする(『柳生十兵衛死す』は未読。お恥ずかしい)。が、やはりこの『魔界転生』を、『甲賀忍法帖』や『くノ一忍法帖』と並ぶ、忍法帖シリーズの最高峰と評す人も多いわけで、もし未読の人がゐたら、まづはオススメ! の作品ではある。少なくとも、映画を観るよりずつと良い。ちと長いですが。

 んで、パラパラと各所を斜め読み、飛ばし読みしてゐると、思ひ出してきた、思ひ出してきた! さうさう、こんな話だつた! やはり、天草四郎は魔界側の総大将ぢやなかつた。総大将は森宗意軒。参謀として由比正雪。また、映画には出てこない魔界転生した剣豪たちが何人かゐる。さらに……。映画を観た後だからか、風太郎がいかに緻密にこの長編を組み立ててゐるかが分かり、あらためて驚嘆した。最初に読んだ時は、面白さに夢中になつてひたすらページを読み進み、あまりさういふ事は意識しなかつたやうに記憶してゐるが、このやうに映画と較べてみると、一見単純なこの話を面白くするために凝らされた工夫の数々に、ひたすら感心した。やはり、小説は再読してみるもんだ。このやうに、映画と較べてみるのも良いかもしれない。

 久しぶりに、忍法帖シリーズが読んでみたくなりました。(買つてそのままの忍法帖シリーズも多いからね、『銀河忍法帖』とか)

小川顕太郎 Original:2003-May-24;