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 Diary 2003・3月4日(TUE.)

ぴんから

 今から 10 年以上も前の話。私とトモコはエレベーターに乗つてゐた。エレベーターには我々の他に、をばさんがふたり乗つてをり、をばさんふたりは、ひとつのウオークマンからひとつのヘッドフォンを分け合つて、熱心になにやら聴いてゐた。私は彼女らが何を聴いてゐるのか気になつたのだが、わづかに漏れる音からでは、何を聴いてゐるのか分からなかつた。エレベーターが 1 階に着き、扉が開く寸前に、どうやら曲が終わつたらしく、ふたりは同時にホッと溜息をつき、お互ひ顔をあはしてかう言つた。「やつぱり、ぴんからトリオは最高ね」。私とトモコはその場で硬直してしまい、必死で笑ひを堪へたのであつた…。

 あの頃、私はまさか自分がウオークマンで「ぴんからトリオ」を聴くやうになるとは思つてもみなかつた。しかし、現に今日、私はウオークマンで「ぴんからトリオ」の『女のみち』を聴いてゐたのであつた。そして、曲が終はるとかう呟く。「やはり、ぴんからトリオは最高だ!」

 1 年ほど前でも、私はまだ「ぴんからトリオ」の魅力に気がついてゐなかつた。雑誌「ミュージック・マガジン」の昭和歌謡特集で、横山剣が自分の昭和歌謡ベスト 1 にぴんからトリオの『女のみち』をあげてゐるのを見ても、ホントかね? イメージ戦略ぢやないのか? などと穿つた見方をしてゐた。しかし、それは単に私が無知で無教養であつた、といふ事なのだ。『女のみち』は驚異的な名曲である。最近の私は、毎日一度は『女のみち』を聴くやうにしてゐるのだが、聴くたびに唸つてしまう。凄い。土着的でゐながら、とても洒落てゐる。そして宮史郎のボーカルの素晴らしさ! 発売当時(1973 年)、300 万枚を超える大ヒットを記録した、といふのも当然だと思へる。今までこの曲を知らなかつた自分を大いに恥じる。と同時に、この曲に巡り会へて、ホントに幸せだと思ふ。「演歌サバイバーズ」をやつて、ホントに良かつた。ちなみに、「演歌サバイバーズ」では『女のみち』は歌ひません。難しすぎるので。いつか、歌へるやうになればいいなあ。

小川顕太郎 Original:2003-Mar-05;