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 Diary 2003・3月2日(SUN.)

日本の音楽はどこヘ

 ヤマネゴロウ氏来店。日本の伝統的な音楽は、本当は西洋の 12 平均律に当てはまらない、故に本当は五線譜で書き表すことはできない(少なくとも非常に困難)、といふことはよく言はれる事だが、ではここまで西洋の音楽が日常に浸透し、教育の場でも五線譜が当たり前になつてゐる現在、日本の伝統的な音楽は生き延びてゐるのだらうか? 演歌の世界でも、五線譜で書き表した楽譜がある。ぢやあ、演歌もすでに日本の伝統的な音階や旋法を失つてゐるのだらうか? といふのが、私のしばしば頭を悩ましてゐる疑問であつた。クラッシックの世界で生きるピアニストのヤマネゴロウ氏に、こんな事を尋ねるのはお門違ひかと思つたのだが、敢へてきいてみる事にした。

「詳しいことはボクも分かりませんが、確か武満徹と一柳慧がその昔対談で、最近は雅楽の演奏者も西洋のコード・モードで演奏してゐる、と嘆きあつてゐたのを覚えてゐます。最近のボクの体験でいへば、NHK の大河ドラマ『宮本武蔵』を見ていると、出てくる娘が横笛を吹くんですが、これが完全に西洋のコード・モードなんです! メロディーは日本的なんですが…これが気持ち悪くて。裏情報によると、どうやらフルートの人が指導をしてゐるやうです。」

 なるほど。現在のブラックミュージックの源流のひとつであるブルース、その特徴は、西洋の 12 平均律から微妙にズレてゐることである。所謂ブルー・ノートといふ奴だが、これが独特の味になつてゐる。このズレは、アフリカの伝統的な音楽と、西洋の音楽が衝突することによつて産み出されたものだ。と、いふことは、我々も我々のブルースを持つてゐるはずなのだ。ウイントン・マルサリスが「日本の音楽はブルースだ。『君が代』もブルースだ」と言つたのは有名な話だが、さうなのだ。我々もブルースを持つてゐるはずなのだ。しかし、日本のブルースは生き残つてゐるのだらうか。私はよく分からない。聴き分ける自信もない。

 ちなみにヤマネゴロウ氏は数日後に、世界に向けての第一歩を記すべく外国に旅立つ。ヤマネゴロウ氏のこれからの活躍に、大いに期待したい。

小川顕太郎 Original: 2003;