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 Diary 2003・1月19日(SUN.)

五輪書

 朝から肩こりが激しい。激痛といへる。これはきつと上海日記のせゐだ。痛い、痛い。こりやたまらん。今日は日記を休ませて貰おう。

 ……といふ訳にもいかんか。ぢやア、いま流行りの宮本武蔵についてでも書きますか。

 宮本武蔵といへば、『五輪書』。私も、可能涼介に猛烈に薦められて読んだ。私的には、どんな事があつても生き残る事が一番大事なのだ! といふ思想に共感した。宮本武蔵は、生涯一度も負けなかつた無敵の剣士といはれてゐるが、実はそんな事はなかつたんぢやないか? とも根強く言はれてゐる。雑魚ばかりを相手にしてゐたとか、有名な小次郎との闘いも、何人かで騙し討ちにしたとかいはれてゐる。とにかく自分より強い相手とは闘はない、強い相手と闘ふ場合は卑怯な手を使ふ、というのが武蔵のやり方だつたとか。これが本当かどうかは分からないが、『五輪書』を読むと、例へそれが本当だつたとしても、別にいいぢやないか、と思へてくる。『五輪書』の要諦は、とにかく生き残ること。それが勝つことなのだから、自分より強い相手とは闘はないといふのは当然だし、仕方なく闘はなければならない時は、卑怯でも何でも、とにかく相手を倒すことだ。自分より強い相手とまともにやりあふのは、アホといへる。私はここで、先日観た『ブレッド & ローズ』を思ひ出す。大企業とまともにやりあひ、解雇されたり強制送還されたりしてゐる主人公のマヤたちは、アホといへる。対して、(アホな)仲間を売つてでも自分の生活を守る姉のローサは、『五輪書』の真髄を体得してゐるといへるだらう。しかし、ローサのやうなやり方では、なかなか状況は変はらないともいへる。結局、武蔵があれほど頑張つたにも関はらず、どこにも仕官できなかつたやうに、ローサは貧乏で搾取された生活から逃げ出せないかもしれない。かと言つて、マヤたちは? 一発逆転を夢見ながら、潰されていくのがオチだらう。となればやはり、ローサのやうに、決して負けないやうに、しぶとく生き残るのが賢いのではないか?

 我々は『五輪書』から多くの事を学べるだらう。

 ああ、肩が痛い!

小川顕太郎 Original: 2003;