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 Diary 2003・1月7日 その 2(TUE.)

上海日記 2日目
中編

川妹子豆花村市内の印象(2)新雅粤菜館

川妹子豆花村

 上海博物館を出て、お腹が空いたので、近くの飲茶屋にでも行くことにする。私が事前にチェックしてゐたのは、「上海大壷春」と「長安餃子楼」。どちらも人気があり、規模も大きさうなので、簡単に見つかると思つてゐたのだが、何故か見つからない。前者があるべき場所は更地で工事中に見えるし、後者があるべき場所は中華のファーストフード店に見える。探し方が悪いのだらうか。それとも、上海は刻一刻と街が更新され続けてゐるので、すでに無くなつたのだらうか。いつまでもウロウロしてゐる訳にはいかないので、目の前にあつた「川妹子豆花村」といふ店に入る。

 夕方だつたからか、我々以外に客はゐない。店員の人達はみなシナ語しか喋られないやうで、メニューも簡体字のみで書いてある。困つた。よく分からない。店の端に食べ物が色々と入つてゐるケースがあり、トモコがそこに行つて、何かを指さしながら店員の人と喋つてゐたが、帰つて来て「ダメ、全く話が通じない」と言ふ。困つた。我々がメニューを睨んでゐると、店員の人が、大きなガラスの鉢になみなみと赤い液が入り、その上に大量の唐辛子の載つたしろものを持つてきて、テーブルの上に置いた。「なに、これ。注文したの」と私。「いーや、ただ指さして『これは辛さうですね』と言つただけよ。」とトモコ。「な、なんでそんな余計な事を言ふんや! 言葉も通じないのに!!」と私は呆れた。が、かうなつては、食べない訳にはいかない。そもそもこれは何なのか。恐る恐る箸をいれると、その赤い液の中に、鶏肉が入つてゐた。食べる。うまい。が、辛い。けど、うまい。調子に乗つて他のものも注文する。担々麺と水餃子。ところがこれが、やたら小さい!! 小振りの湯飲みのやうなものに入つてゐる。バカにされてゐるのか? とも思つたが、店員の人はニコニコとして頷いてゐる。注記してをくと、この店員の人は本当に愛想もよく、感じのよい人であつたのだ。我々もニコニコとして頷き返す。

 それにしても、辛いので、何か飲み物がほしい。私は店員の人に「チャ! チャ!」と言ひながら、お茶を飲む仕草をした。店員の人は分からないやうな顔をしてゐたが、「チャースイ?」と言つてお茶を飲む仕草をしたので、私は「シ! シ!」と答へた。「茶水」か?

 お茶がやつてきた。ところが、これが…! ガラスのコップに茶葉をいれ、上からお湯を注いであるのだが、茶葉の半分くらゐがお湯の表面に浮いてゐるのだ。どうやつて飲めといふのか。やはり、バカにされてゐるのか? と思つたのだが、店員さんはニコニコ笑つて頷いてゐる。我々も、ニコニコと笑つて頷き返す。……ううん、やはり飲めない。茶葉が口の中に入る。お茶が飲みたい、でも飲めない。我々はニコニコと笑つてそこを出た。二人で 31 元なり。>> 上海寫眞帳 15 | 16

市内の印象(2)

 街を歩くと、とにかく至る所で工事をしてゐるのが目に付く。その工事現場から出る埃で、いささか視界が見えにくいほどだ。が、上海の人達はそのやうな事は気にならないのか、工事現場のすぐそばにある店で、その店はドアなどなく、食材が道路に山と積まれてゐるのだが、埃まみれになりながら、何かを食べてゐる。身体に悪いぞ、と私なんかは思つてしまうのだが、余計なお世話だらうか。

 トモコは「パンダがない! パンダが! パンダ!」と叫んでゐる。17 年前にトモコが上海に来た時は、街中にパンダが溢れてゐたさうだ。例へば、パンダのゴミ箱。これが街の至る所にゐたり、人々は、みんなパンダのアイスキャンディーを舐めてゐたさうだ。きつともうパンダはアウト・オブ・デイトなのだらう。上海の人達は、「パンダ、パンダ」と言はれる事に、うんざりしてゐるかもしれない。

「普請中」といふ言葉が頭に浮かぶ。正に「普請中」の街だと思ふ。明治時代の日本のやうな、といへば言い過ぎなら、高度経済成長時の日本のやうな。これからどうなつていくかは予断を許さない、といつた所か。

新雅粤菜館

 南新雅大酒店(Hotel Grand Nation)といふホテルの前まで来る。ここには確か、「新雅粤菜館」といふ有名なレストランがあつたはず。先程の「川妹子豆花村」では、満足するほどの量は食べられなかつたので、ここに寄つてみる事にする。「新雅粤菜館」は 2 階にあるといふ話なので、エレベーターの前まで行く、すると「ニカイデスカ?」と、エレベーターの前に立つてゐたお姉さんがいきなり日本語で話しかけてきた。ここには、どうやら日本語を喋る事のできる人達がゐるやうだ。2 階に行くと、「ニメイ、ニメイ」と言はれて、席まで案内された。

 さて、この「新雅粤菜館」だが、数少ない「国家特級酒家」の名称が与へられてゐる名門で、上海にある広東料理の店としては超有名、ニクソン大統領も訪中時に立ち寄つた、といはれる凄い店らしい。が、その印象はといふと…田舎にある百貨店の鄙びた食堂。音楽もなにか日本語の歌がかかつてゐる。それもどうやら、日本人ではない人が歌つてゐるやうだ。しかも、その歌がエンドレスでかかつてゐる。ううむ、頭がおかしくなりさうだ。

 とはいへ、ここではスイスイと注文でき、ホイホイとおいしい飲茶が出てきて、我々は満足した。お茶も、普通に急須で持つてきてくれて、飲むことが出来た。嬉しい。二人で 39 元なり。

小川顕太郎 Original: 2003;