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 Diary 2003・1月7日 その 1(TUE.)

上海日記 2日目
前編

起床曙光市内の印象(1)上海博物館

起床

 昨日あれほど疲れ切つてゐたのに、朝の 5 時頃に目が覚める。空腹の故だ。考へてみれば、昨晩は碌に何も食べてゐないのだ。ホテルの朝食は 6 時半からである。ここで、グランドクラブに於ける特典を、もうひとつ紹介しやう。

 ホテルには「グランドクラブルーム」といふ部屋があり、グランドクラブのゲストは、自由にここを使つてよい事になつてゐる。朝の 6 時半から 23 時までオープンして居り、朝は朝食が、昼はアフタヌーンティーが、夜はイブニングカクテルが供される。それとは関係なしに、コーヒーや紅茶は終日ここでサーブされる、といふものだ。つまり、我々は朝食はここで食べる事になるのだが、この朝食といふのが「コンチネンタル・ブレークファースト」。確か、「コンチネンタル・ブレークファースト」といふのは、コーヒーにパン、それに卵がひとつ付くか付かないか、と言つた代物ではなかつたか。我々はヨーロッパ旅行時の記憶を思ひ起こし、暗然とした。

「そんなもので満足できるわけないぢやない!」とトモコが怒るので、私はトモコが出掛ける用意をしてゐるあいだに、朝早くからやつてゐる飲茶屋を、何軒か調べてピックアップした。もうかうなれば、シナ人の凝視にたぢろいではゐられない。私は玉砕覚悟の悲壮な決意を固めた。

「やつぱり、少しでも何かを口にしなければ、動けない」とトモコが言い出した。確かに、さうかもしれない。ちやうど時間も 6 時半になつた事だし、コーヒーとパンを少しだけ口にし、それで元気をつけて出掛けることにした。無料だし。我々はグランドクラブに向かつた。

曙光

 グランドクラブは、83 階にあり、もちろん全面ガラス張りだ。まだ、外は暗い。中に入ると、大テーブルに様々なパンが山積みになつてゐるのが目に入つた。どれもこれも、凄くおいしさうだ。これは、案外いいかもしれない、と思いながらさらに奥に入ると、もうひとつ大テーブルがあり、そこにはさらに様々な食べ物が並べてあつたのだ! 鍋の中で煮えてゐる中国粥、点心、生ハム、サーモン、チーズ、サラダ……。私とトモコは夢中でそれらを皿に盛つた。食べる。うまい! うますぎる! ホテルの食事で、ここまでおいしいものを食べたのは、初めてかもしれない。これは嬉しい誤算だ。さすがはグランドクラブ、かうでなくては。と、その時、静かに夜が明けてきて、ガラスの外に、上海の絶景が鮮やかに拡がつた。本日は快晴である。私は、感動に包まれた。やはり、上海に来て良かつた。

 その後、満腹してすつかり満足した我々は、部屋に戻り、幸せな惰眠を貪つた。飲茶屋行きの事など、完全に頭から消えてゐた。>> 上海寫眞帳 08 | 10

市内の印象(1)

 とはいへ、いつまでも惰眠を貪つてゐる訳にはいかない。我々は昼前にホテルを出た。今日の最初の目的地は上海博物館である。人民広場の前でタクシーを降りる。ここで初めて、我々は上海市内をゆつくり眺めた。昨日は、すでに薄暗かつたし、疲労ゆゑに脳味噌にフィルターがかかつてゐたからだ。

 まづ目に入つて来るのは、やはり高層ビル群だ。変な形のビルが多い。それだけ見あげてゐると凄くモダンな印象だが、目線を下に降ろすと、そこには雑然とした猥雑な街並みがある。個人的には、大阪の天王寺を思い出す。薄汚れ加減もよく似てゐると思ふ。が、真に特筆すべきは、そこにゐる人々である。

 私は断言するが、シナの人々は、たぶん「ルール」といふ概念をよく理解してゐない。みんな信号を守らな過ぎる。確かに日本でも、特に大阪の人間は信号を守らないといはれるが、それでも、赤信号で渡るのは、車が通つてゐない時だ。ところが、ここではみんな、車がビュンビュン通つてゐるのに、平気で道を渡ろうとする。交通整理のやうな人がゐて、笛を鳴らし、怒鳴つてゐるのだが、みんな無視してゐる。

 そして、それに負けずに車も凄い。人々が道路上にゐるのに、ちつともスピードを緩めない。常にクラクションを鳴らしながら、人々の群れに突つ込んで来る。日本なら、まづ捕まるだらう。まさに大陸の個人主義といふものを見せつけられたやうで、感動する。それと共に、最近はかなり落ちてきたとはいふものの、和と礼を重んじる日本の文化の高さを誇りに思ふ。が、さらにそれと同時に、こんな事では大陸の連中に負けるやん! といふ、憂國の感情に捉へられる。>> 上海寫眞帳 09

上海博物館

 素晴らしい、の一言。建物は鼎の形を模した、斬新といふか、なかなか格好良いしろもので、中の展示方法も最新式だ。書の展示室など、もの凄く暗いのだが、作品の前に立つとフワッと明かりがつくといふ仕掛け。訓練されてをらず、全身から「退屈だよー」といふオーラを発した警備員達との対比が面白い。

 収蔵品に関しては、いはずもがな。質・量ともに凄い。書、篆刻、陶磁器、青銅器、着物、家具……。とてもぢやないが、一日で観きられない。途中で疲れ果ててしまつた。ここには必ずもう一度来なくてならない。が……何時になる事やら。>> 上海寫眞帳 12 | 13 | 14

小川顕太郎 Original: 2003;