京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

Home > Diary > 03 > 0208
 Diary 2003・2月8日(SAT.)

ゴスペル

 さて、アメリカではクリスチャンが現代の若者に福音を伝へるために「今風」の音楽をやつてゐたりするといふ。さういふ音楽専門の有料テレビの番組などをみると、ファッションは今の若者風で、音も今はやりのロック風でありながら、歌詞だけは福音についてのものといふバンドが次々に出てくる、といふ。グランジ風であつたり、ゴス風でありながら、歌詞をきけば福音について唄つてゐるといふ、かなり奇妙な世界がそこにはあるやうだ。

 かういふのはお笑いだし、かなり醜いと思ふ。大人が子供にすり寄る嫌らしさがある。しかし、これがゴスペルといふことになれば、話はまた違つてくるのだ。ゴスペルももちろん福音について歌ふのだけれど、もともとゴスペルは、虐げられた黒人たちが、教会音楽を換骨奪胎して自らの表現としたものである。だからなのか、ブラックミュージックの重要な水源のひとつとして、昔も今も、しつかり根付いてゐる。ゴスペルの世界から、世俗の(?)ブラックミュージックの世界にきたミュージシャンは多いし、その逆も少なからずある。また、ゴスペルシンガーのままで、世間的に売れてゐるミュージシャンもゐる。いはゆるコンテンポラリー・ゴスペルといふ奴で、カーク・フランクリンやヨランダ・アダムズ、メアリー・メアリーなど。彼(女)らの音は、現代の R & B に非常に近い。歌詞は福音についてだが、音は「今」なのだ。

 そんな中で、最近の私(とトモコ)のお気に入りはトーネイで、昨年出したアルバムからのシングル『'BOUT A THANG』は、昨年のベストシングルに選びたいほどの格好良さ。歌詞の内容が分からない我々にとつては、極上のダンスナンバーでしかない。しかし、曲にあはせて無邪気に踊りながら、これはゴスペルだしなア、といふ思ひも、頭を時々よぎつてはゐた。そのトーネイのミュージックビデオを、見た。

 ホールのやうな所の舞台の上で、トーネイがバックダンサーたちとともに、歌ひ踊つてゐる。バックダンサーは、ブレイクダンスなんかしたりしてゐる。これだけ見れば、他の R & B のビデオとなんら変はりがない。ところが、そのステージを見ている観客たちをみると、手を左右に振りながらハンドクラッピングしてゐるのだ! これを見て、我々は、おお! ゴスペル! と感心したのでした。

 今日は雨が降つたおかげで、暖かかつたです。

小川顕太郎 Original: 2003;