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 Diary 2003・8月12日(TUE.)

極真空手

「ほほほ、私はねえ、『癒し系』ってやつが大嫌いなの。『癒し系』って、なんか卑しいぢやない、物欲しげで。だけど世はあげて『癒し系』の天下。この現状をなんとかするために、私、極真の道場に通ふわ!」と、トモコが公言し始めたのが約一月前。どこまで本気なのかな? と私は怪しんでゐたのだが、本日とうとう道場に行つてしまつた。トモコは背も低いし、痩せがた、さらに運動なんてほとんどしたことがない(ダンスは除く)人間で、自転車も満足に乗れないぐらゐなのに、大丈夫なのだらうか。私はトモコが道場から帰つて来ると、とるものもとりあへず、すぐに様子をきいた。

「……ダメ、ダメだわ。凄く緊張してしまつて…みんな凄い汗をかいて道場の床なんてビショビショなのに、私はちつとも汗をかかなかつた! 練習にも全然ついていけないし…黒帯の先生が結構褒めてくれるんだけど、それがかへつて辛かつたわ。…そもそも、場違ひ感が激しいわね、私、こんなに浮いたのは、バイクの免許をとりに教習所に通つた時以来かも」

 やはり。懸念した通りだ。

「でもね、楽しかつたわよ、なかなか。『敵の喉を狙つて撃つ!』とか『顔面を突いて!』とか、こころにグッとくる言葉が飛び交つてゐるし。ただねえ、あの『押忍!』といふ挨拶が、どうも恥づかしくて言へないわねえ…」

 あかんやん、まづ挨拶が基本でせうに。…で、これからどうするの?

「もちろん、続けるわよ! なんと言つても、私は『威嚇系』ですからね、ほほほ」

 なるほど。頑張つて下さい。

小川顕太郎 Original:2003-Aug-14;