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 Diary 2003・8月10日(SUN.)

長い小説

 ハッサクさん来店。現在、北方謙三の『三国志』を読んでゐるさうなのだが、これがまた面白くて夢中なのださうだ。北方謙三の『三国志』は、『三国志演義』を単に日本語訳にしたものではなく、正史なども鑑みながら独自に『三国志』を語つたもので、一部で非常に評判の高い作品だ。カウンターで、注文したカプチーノが冷めるのも気にせずに、ほとんど前のめりになつて『三国志』に熱中するハッサクさんだが、見てゐると、しきりに本の最初に戻つて何か読んでゐる。これは…と思つてゐると、案の定、登場人物が多すぎて、それらの人間関係を把握し直すために、本の冒頭に戻つてゐるのであつた。だから私は、人物表を作りながら読めばいいんぢやないですか、とアドバイスした。長編小説では、読みながら自分で人物表を作るのも楽しみのひとつ、と聞いたことがあるからだ。

 それはガルシア・マルケスの『百年の孤独』の新装版(新訳?)が出た時のことで、旧版にはなかつた特典として、この大量の人物が出てくる小説の人物表(家系図)が附いてゐたのだけれど、それに対して「長編小説を読む楽しみを奪ふもの」といふ非難が出てゐたのだ。なるほど、と私はその時に思つた。もちろん、私は『百年の孤独』を、何度も最初に戻りながら読んだくちだつたのだが。

 それにしても私は、長編小説を前にすると、尻込みしてしまう。いつか読まう! と固く決意してゐるつもりなのだが、今は忙しいからまた今度、今度、と先延ばしにしてゐるうちに 33 歳。なんだ、まだ若いぢやん、と思つてゐるうちに、アッといふ間に時は経つのだらうな。このままぢやあ、『三国志』も『失はれた時を求めて』も『大菩薩峠』も『アンナ・カレーニナ』も『ブッデンブローク家の人々』も、読まずに一生を終へるかも。別にいいんだけど。

 思ひ立つたが吉日、ですな。

小川顕太郎 Original:2003-Aug-12;