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 Diary 2002・11月3日(SUN.)

P-ファンクの
DVDが出た

 P-ファンクの 1976 年の伝説のライブ映像が、完全版となって DVD 化された。この映像は、80 年代に抜粋版(17 分)が発売されていて、これが P-ファンク唯一の公式ライブ映像だった。P-ファンクといえば、やはりあの象の鼻やオムツにおしゃぶりなど、奇抜な衣装抜きに語ることは出来ない。だからファンはみな必死になってブートのビデオなどを買いあさっていた。私も 1 本買ったことがある。が、やはりこの 1976 年ヒューストンでの映像の完全版が、公式に発売されるのをみんな待っていた。なぜなら、P-ファンクはメンバーの流動が激しいことでも有名で、この 1976 年はそんな P-ファンク史上最強の面子が揃っていた、とされるからだ。

 確かに凄い面子だ。メイシオ・パーカーやバーニー・ウォーレル、ゲイリー・シャイダーにグレン・ゴーインズ、レイ・デイヴィス、マイケル・ハンプトン…。ブーツィー・コリンズは、最後に顔を見せているのがそうだと思うのだけれど、演奏には加わっていなかったようだ。このツアーでは、スライ & ザ・ファミリー・ストーンとブーツィーズ・ラバーバンドが前座だったようなので、最後に顔だけ見せたのだろう。とにかく、これだけの面子が同じステージ上で歌い、踊り、演奏する。音の塊のような巨大なグルーブが渦巻く。その中を、何度も衣装替えをして、ジョージ・クリントンが歩き回る。かっこよすぎ。それにしても、ジョージ・クリントンは歌が下手だ。グレン・ゴーインズが歌った後などに聴くと、笑ってしまうほど下手さが目立つ。この最強の P-ファンク軍団は、演奏・歌ともにずば抜けた、一流のプレイヤーが揃っている。が、その中で、下手くそなジョージ・クリントンが一番かっこいいというのは、どういう事だ? まさにカリスマである。ファンクを体現している。

 私が思うに、今現在、世間でファンクといえば、ベースがブンブン言っていて、ギターがチャカチャカ鳴っていて、ホーンが狂騒的に騒ぐ、アップテンポなダンスナンバーを指すことが多いような気がする。ディープ・ファンクなんかもそっちの系統だが、本来(?)ファンクとはそのようなものではなく、というか、そのようなものだけを指すのではなく、うねるような、重く、黒くて、猥雑な、グルーブの渦である。P-ファンクは正にそういったファンクで、さらに P-ファンクはファンクを思想にまで高めた、と言われる。だから、この映像は、1 冊の本としてある。ファンクという思想がいっぱいに詰まった本。

 期間限定とはいえ、2980 円と安い。あなたの本棚に、というより、あなたのアーセナル(武器庫)に、是非。と、推薦文めいた事を書いて、擱筆する。

小川顕太郎 Original:2002-Nov-5;