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 Diary 2002・5月28日(TUE.)

突入せよ!
あさま山荘事件

 大宮東映に『突入せよ! あさま山荘事件』(原田眞人監督)を観に行く。ところで、「あさま山荘事件」といって、今の若い人達(?)はどこまで知っているのだろうか。というのも、この映画は、突入する警察の側から撮ったものであり、突入される「あさま山荘」に人質をとって立て籠もった連合赤軍側のことについて、まったくと言って良いほど言及していないからだ。

 もちろんそのことが、「あさま山荘事件」といえば連想される連赤側のゴチャゴチャしたすでにクリシェと化した諸々を切り捨てたことが、この映画の特質であり、美点でもある訳だが、それでも他ならぬ「あさま山荘事件」である、という事を描かないと、単に犯人が人質をとって立て籠もっただけの事件と変わらない印象を、特に連赤事件について詳しくない人々に与えてしまい、結果として面白味を欠くのでは? と思ったのだ。

 私が言うのは、何も連赤側を描けと言うのではなく、この「あさま山荘事件」の持つ特殊性をもっと描けば良かったのに、ということだ。それはこの事件は、重要な情報戦でもあった、という事だ。私は当時の世間の雰囲気は知らないけれども、どうやらこの事件の頃までは、比較的世間は学生運動に寛容・同情的であったらしい。つまり、立て籠もる連赤側の犯人達に対して同情を含むいささかの共感を持つ世間が注視する中で、警察はこの事件を解決しなければならなかったという事だ。だから、この事件の解決とは、単に人質を救出して犯人を捕まえるだけではなく、「犯人達は革命の英雄ではなく、国民の敵である、という事を示さなければならない」という役所広司のセリフを貫徹する事にあったのだ。その困難が、もう少し明示されていればなあ、と観ながら考えたのであった。(良質な)ハリウッド政治映画なら、絶対に情報戦の側面をもっと描くだろう。

 まあ、以上の事を横におけば、なかなか達者なエンタテインメント作品に仕上がっていて、最後の突入シーンなんかはかなり面白い。ババさんとともに、日頃から「あー、もっと日本も面白い政治映画をバンバン作るようにならないですかねえー」と言いあっているだけに、この作品の出現は、やはり嬉しい。厳密に言えば、この映画は政治映画というより、アクション映画かもしれないですが。次は坂本順二監督の『KT』か?

 それにしても、いくら本当に酷かったとはいえ、長野県警の事を一方的に悪く描きすぎてないか? この映画の原作(佐々淳行著)自体が、自分の事を良く書きすぎ・公平さを欠く、という批判がかなり出た問題の作品だったので、映画も原作に引きずられたのか。その点も、ちょっと不満。役所広司がうまいので、ついつい誤魔化されてしまうが、ちょっと主人公の事をよく描きすぎだ。

 とかなんとか、不満点も多いが、お薦めの作品です。街に出て、『突入せよ! あさま山荘事件』を観て、帰りにオパールへお立ち寄り下さい

小川顕太郎 Original:2002-May-29;