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 Diary 2002・12月17日(TUE.)

フォー エバー
モーツアルト

 みなみ会館に『フォー エバー モーツアルト』を観に行く。映画のベスト 10 鼎談を明日に控えての、最後の追い込みだ。この映画はゴダールによる 1996 年の作品。『映画史』以降のゴダールを示す作品として、当時話題になったものだが、その時は日本での公開はなく、今回が初公開(のはず)。長く待っていた作品のひとつだ。が、すでにヤマネくんが観ていて、「ボクはダメでした!」と言っていたので、いささか不安であった。また、ババさんによると「浅田彰も 1 回観ただけでは良さが分からず、3 回ほど観て、やっと傑作と確信したらしいですよ」との事であり、それじゃあ、私なんかさっぱり面白さが分からないかもしれない、と弱気にもなっていた。それでも、これを観ればちょうど今年観た公開作が 20 本になる、と自分を奮い立たせ、みなみ会館に向かったのであった。そこには、「ゴダールの映画」があった。

 最初の懸念を吹っ飛ばすほど、この映画は最初から面白かった。冒頭、『フォー エバー モーツアルト』と画面に出て、同時にベートーベンが鳴り響くところでいきなり吹き出してしまった。おもろいやん。話が始まると、もう、とにかく展開が早い早い。気が狂っているかと思うほど。セリフもかぶりまくっているし、人々の動きも、早すぎて変、あまりのテンポの速さに、物語の枠がガクガクにされている。面白すぎる。そして、随所にびっくりするような美しい場面を挟みながら、一気にラストの人を喰った演奏会に辿り着く。約 1 時間半。アッという間の出来事であった。

 正直言って、私はこの作品をここまで楽しめるとは思っていなかった。何故こんなに面白いのかも、よく分からない。ゴダールの作品は、大量の引用に満ちているが、それらが分かっている訳ではない。マリヴォーとかミュッセとか、よく知らないし。だから別に深読みをしたり、様々な寓意や意味を読みとったりして、面白がっている訳ではない。ただ、様々なものから次々と引用がなされ、猛スピードであれよあれよと、美しかったり変だったりする映像を挟みながら、大袈裟なまでにメランコリックな音楽とともに突き進む映像が、面白かっただけ。そうとしか言いようがない。この映画の無茶さ加減は、まさに暴力的であり、言うなれば、老人の暴力だ。暴力的なまでの老人力に満ちた映画。私は、『フォー エバー モーツアルト』を、そう評したい。あんまりゴダールを褒めたくないんだけれど、面白かったんだから、仕方がない。って感じ。ああ、明日のベスト 10 は荒れそうだ。

小川顕太郎 Original:2002-Dec-19;