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 Diary 2001・10月15日(MON.)

暴走タクシー

 暇な一日であった。私は早番だったので、0 時をまわった時点で先に帰ることにしたのだが、暇すぎてすっかり疲れ果てていたので、歩いて帰るのは辞めにし、タクシーで帰ろうと思い、店の前にちょうどタクシーが止まっていたのを幸い、それに乗り込んだ。

 様子が変だ。車内には大音量で AM ラジオが流れており、運転手の人は助手席の後ろにまで腕をまわした行儀の悪い姿勢で、なかば上を向きながら煙草の煙を噴き上げている。私は、ラジオの音が大きすぎて分からないのかな、と思い、「すいません」と声をかけると、運転手の人はラジオの音量を下げ、「はい、どこまで」と粗暴な声をあげた。これはヤバイかな? と不安を感じつつ、行き先を告げると、バタンとドアが閉められ、もの凄い勢いで急発進した。私は思わずつんのめって前の座席にぶつかったのだが、顔をあげると、そのタクシーのすぐ前にも、タクシーが停車している。危ない! と思った瞬間に車体は大きく右に揺れ、前のタクシーを越えた所で、また左に揺れて、もとの車線に戻り、爆走を続けた。

 このような無茶苦茶な運転は初めてである。凄いスピードで走るので、前を走っている車との車間距離が全然ない。信号も、無視に近い状態だ。いつぶつかるかとハラハラする。おまけに、下げたとはいえ、常識はずれの大きさで流れている AM ラジオは、寒いギャグを言い続けていたのだけれど、運転手の人はそれに対して「クックック」「キヒヒヒヒ」と笑い続けている。そして片手では何故か小銭をチャラチャラいわせている。片手運転、且つ、笑うたびに俯いたり、上を見上げたりしているのだ。

 事故った場合、このままどこかへ連れ去られた場合、家にまでついてきた場合、どこかに突っ込んだ場合、など様々な場合を想定し、家からは少し離れた所に止めてもらう事にした。

 到着寸前にメーターがカチャリとあがった。すると、運転手の人は「チッ」と舌打ちし、小銭をなにやらカチャカチャいわせはじめた。私はここで卒然と、この小銭はあらかじめお釣りを用意しているに違いない、と悟った。案の定、到着とほぼ同時に、「***円です」と言われ、私が札をわたすと、その小銭をくれた。

 瞬く間にタクシーの走り去った夜道を茫然と眺めながら、私は生きている喜びを感じていた。恐かったー。

小川顕太郎 Original:2001-Oct-16;